首相主催で開かれる「桜を見る会」が、2020年度は取りやめになると発表されました。安倍晋三首相の後援者が多数参加して「税金の私物化」との批判が殺到していましたが、なぜ、突然中止する羽目になったのか――。さっそく、英米がその「真相」に注目しています。
海外が報じた「桜を見る会」の「注目ポイント」とは? 「桜を見る会」を語る英語フレーズも合わせてお伝えします。
英BBCは事実を淡々と並べ「えこひいき」と断言!
「桜を見る会」は、国の予算で毎年「新宿御苑」で開かれていましたが、安倍首相の後援者「招待枠」の存在や、ホテルニューオータニでの豪華前夜祭の様子などが明らかになるにつれ、突然「中止」が発表されました。
日本国内のドメスティックな話題かと思いきや、意外にも(!) 海外のメディアがこのニュースに反応! 速報に近い形で「桜を見る会中止」を報じました。70年近く続いた行事の突然の中止は、「裏に何かあるはずだ」との疑念を抱かせたようです。
まずは英国BBC放送の見出しから。ストレートに、「えこひいき」と報じています。
Japan cancels cherry blossom party amid cronyism accusations
(日本は、えこひいき批判の真っ只中で、桜を見る会をキャンセルした)
cherry blossom party:桜を見る会
amid:~の真っ最中に
cronyism:えこひいき、身びいき
accusations:非難、批判
英BBCは、「桜を見る会」を「cherry blossom party」としています。直訳すると「桜パーティー」ですね。それにしても、「えこひいき」とは随分とストレートだな、と思って記事を読むと、「東京から1000キロメートルも離れた地元(山口県)から850人も招待した」と、首相がたくさんの支援者をわざわざ「遠方から」呼び寄せたことを強調していました。
さらに、「花見は日本人にとって特別な文化」「桜の満開は4月のたった2週間」など、「桜を見る会」がいかにスペシャルなものかを紹介して、首相の支援者が「特別に配慮された」ことをほのめかしています。
確かに、「1000キロメートルの遠方から、わざわざ花見にご招待」とは「えこひいき」の印象を強くします。
事実を淡々と述べながら「問題点」を浮き彫りにする......。英国人らしい、皮肉の効いた報じ方だと感心しました。
米国では例のあの人のために「桜の木をぶった切り」
米国のメディアは別の見方をしています。ニューヨークを拠点とする情報通信社ブルームバーグは、安倍首相が米国との貿易協定のために「桜の木を切った」と断じました。
Japan's Abe axes cherry blossom in bid for U.S. trade pact
(日本の安倍首相は、日米貿易協定のために桜の木を斧で切った~桜を見る会を中止にした)
axe:斧で切る、終わらせる、壊す
in bid for:~のために
U.S. trade pact:米国貿易協定
米ブルームバーグは、今国会での安倍内閣の最優先事項は米国との「貿易協定」を承認することであり、そのための「障害」を取り除く目的で「桜を見る会」を中止にしたと断言しています。
さらに背景には、ウクライナ疑惑で窮地に立たされているトランプ米大統領の存在があり、のどから手が出るほど「疑惑を打ち消す成果」を欲しがっているトランプ大統領が、「貿易協定の締結」を急いでいる、というのです。
ということは、日米貿易協定はやっぱり「米国に有利」な内容だということでしょうか?
それでは、「今週のニュースな英語」は、「桜を見る会」を伝える英語フレーズをご紹介します。せひ、使ってみて下さい。
Prime Minister Shinzo Abe canceled cherry blossom party
(安倍晋三総理大臣が、「桜を見る会」を中止にした)
The publicly funded event with a nearly 70-year history
(70年近い歴史を持つ、国の予算で行われるイベント)
publicly funded:公的予算で、国の予算で
The abrupt decision came after scandals in Abe's cabinet
(安倍内閣のスキャンダル発覚の後、突然決断された)
abrupt decision:突然の決断
Abe cabinet:安倍内閣
Many of Abe's supporters were invited to the last event
(多くの安倍首相支援者が昨年のイベントに招待されていた)
invite:招待する
supporters:支援者たち
いずれにしても、一向に収束する気配のない「桜を見る会」騒動。中止の判断が吉と出るか否か、まだまだアツイ報道合戦が続きそうです。(井津川倫子)