ラグビーワールドカップ(W杯)日本大会は、日本代表チームは史上初のベスト8に進出する快挙を成し遂げる、大盛り上がりの連続で日本中にラグビーブームを巻き起こして幕を閉じました。
今大会における日本代表チーム快進撃のスタートともいえるアイルランド戦に勝った後にも、この勝利が決して奇跡ではないということを取り上げましたが、改めてなぜここまでラグビー日本代表チームが強くなり、観る者を魅了して感動の渦に巻き込んでいったのか、チームづくりという観点から考えてみたいと思います。
個々の判断より「基本」を重視したジョーンズ氏
今回の大躍進の陰にある大きな要因して挙げられることは、「ONE TEAM」をスローガンとするチーム作り、チームが「家族」と感じられるほどの「一体感」を重視して代表チームの運営をしてきた大きな流れがあります。
この流れの土台を作ったのが、前日本代表チーム監督で今大会準優勝の現イングランド代表チーム・ヘッドコーチ、エディ・ジョーンズ氏であるといわれています。そして、年間200日を超える合宿練習で共同体意識を強くするという施策の根底にあったものは、ゲームにおける戦略の転換でした。
ジョーンズ・ヘッドコーチは、世界の強豪チームに比べて日本チームは選手個々の力量が足りていないという判断の下、チームの基本戦略の練り直しを図ります。それはアンストラクチャーと呼ばれる戦術を軽視し、スクラム、ラインアウトなどのセットプレーを重視するという基本戦略への移行でした。
アンストラクチャーとは、スクラム、ラインアウトのように陣形が整備された状況からのプレーではなく、個々の判断に委ねられ臨機応変な攻守が求められるプレーのこと。すなわち、ジョーンズはラグビーの基本である定型プレーこそ最優先で強化すべきものであると考え、それを驚異的な練習量で徹底することこそ世界の強豪チームに少しでも近づく近道であると考えたのです。
それを愚直に取り組んだ結果、2015年の前回W杯・イングランド大会で優勝候補の南アフリカ代表チームを下す大金星を挙げるに至り、日本代表チームはこれを機に成長戦略第2フェーズに入ったと言えるのです。