【日韓経済戦争】日本の半導体専門家が喝!「韓国は死ぬ気で国産化を図る覚悟があるのか!」ソウル講演が大反響

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   日韓経済戦争が泥沼に陥ってから4か月。韓国は日本から輸入していた半導体の素材や部品を国産化しようと政府・経済界を挙げて躍起になっている。

   そんななか、ソウルに乗り込んで「韓国は40~50年かかってもよいから、死ぬ覚悟で国産化する準備ができているのか!」と、喝を入れた日本の半導体専門家がいる。

   「韓国愛」から発した「正論」を韓国は、どう受け止めたか。韓国紙を読み解くと――。

  • 「韓国に覚悟はあるのか」と喝を入れた泉谷渉氏(中央日報11月12日付より)
    「韓国に覚悟はあるのか」と喝を入れた泉谷渉氏(中央日報11月12日付より)
  • 「韓国に覚悟はあるのか」と喝を入れた泉谷渉氏(中央日報11月12日付より)

輸出規制で世界1の日本企業が営業利益10分の1に

   日本の韓国に対する半導体素材・部品の輸出規制は、日本のメーカーにも大打撃を与えている。「それみたことか」という論調で伝えるのが、朝鮮日報(2019年11月11日付)「フッ化水素世界最大手ステラケミファ、営業利益が10分の1に」だ。

「高純度フッ化水素の世界市場でシェア70%を占める日本企業、ステラケミファは2019年7~9月期の営業利益が前年同期の10分の1にまで激減した。日本政府が韓国へのフッ化水素輸出を規制したことで、業績が悪化するというブーメラン効果を生んだ格好だ」

   ステラケミファは11月8日、7~9月期の売上高が前年同期比21%減の74億600万円、営業利益が88%減の1億4800万円だったと発表した。9月中間決算も売上高が12%減の171億4000万円、営業利益も54%減の9億9600万円という落ち込みようだ。

   ステラケミファは純度が99.9999999999%を超える超高純度フッ化水素の製造技術を持っており、この分野では世界中で追走できる企業は皆無の状態だ。例年、フッ化水素生産量の60%を韓国のサムスン電子、SKハイニックスに輸出してきたが、日本政府が輸出規制にあい、韓国に輸出できずにいる。

   こうした日本企業の苦境を、小気味よさげに報道する韓国紙が増えている。また、「国産化に成功した」とする記事も非常に多い。

「韓国はお金にならなくても40年間我慢できるのか」

   こんななか、ある日本の半導体専門家がソウルで講演し、メディアや半導体メーカー幹部を前に「韓国には本当に国産化を図る覚悟ができているのか!」と喝を入れたのだった。

   中央日報(11月12日付)「『韓国、金にならなくても40年投資する準備できているか』日本人専門家の素材・部品・装備診断」が、こう伝える。

「日本の半導体専門家である産業タイムズ社の泉谷渉代表が11月11日にソウルプレスセンターで『なぜ日本は素材産業が強いのか』を主題に講演した。彼は『創業100年以上の企業がすぐにお金にならなくても数十年間ひとつの分野にぶらさがったため。40~50年かかってもよい。死ぬ覚悟で国産化しなければならない』と話した」

   産業タイムズ社(本社・東京都)は1967年創業の国内唯一の電子デバイス業界専門紙だ。半導体、一般電子部品、フラットパネルディスプレー、プリント配線板、太陽電池、2次電池、各種製造装置や電子材料などもカバー。電子デバイスの視点から自動車や医療、ロボット、FA、航空・宇宙といった産業分野の動向も詳細に報道。上海、ソウルにも支局を持っている。泉谷渉社長は40年近く第一線を走ってきた国内最古参の半導体記者だ。日本電子デバイス協会副会長も務めている。

   泉谷渉社長の講演会は、韓国半導体ディスプレー技術学会が主催し、報道陣だけでなく、半導体関連学会の研究者、サムスン電子やSKハイニックスなどの半導体メーカー幹部、そして韓国の素材・部品・装備業者関係者が参加した。日韓経済戦争が勃発して4か月を超え、やっと日本の半導体専門家の冷静な目から見た韓国半導体産業の現況を謙虚に学ぼうという機運がおきたのだった。

   中央日報がこう続ける。

「泉谷代表講演に先立ち、自身を『親韓派中の親韓派』と紹介した。(そして明治維新から国産化の動きを説き起こした)19世紀末に日本の明治政府は欧州と米国に遅れを取った産業の復興に向け素材・部品・装備の国産化を掲げた。150年過ぎた21世紀初めに、韓国は日本の輸出規制に対抗し素材・部品・装備の国産化を国家的課題として推進している。日本は明治政府の時から政府が品目ごとに40~50年かかってもよいから死ぬ覚悟で国産化しなければならないと推し進めた。韓国の国産化戦略を十分に理解する、と話し始めた」

ノーベル化学賞・吉野氏の研究中、旭化成は金を稼がなかった

   泉谷氏は「韓国の気持ちはよくわかる」というのだった。しかし、彼は日本の素材産業が強い理由を説明しながら、あちこちで韓国の国産化に対する批判的な見方を遠慮なく示した。まず彼が挙げた日本が素材に強い最初の理由は、100~300年になる日本の素材・部品・装備企業の歴史だった。

   たとえば、半導体リードフレーム素材分野で世界1位である住友金属鉱山は江戸時代中期の1590年に設立されてから420年も銅精錬と細工一筋にやってきた。また、半導体用多結晶シリコン分野の世界シェア30%で1位のトクヤマが設立されたのも1918年。日本には創業100年以上の企業だけで3万社に達すると強調した。日本の輸出規制品目であるフォトレジストを作るJSRは1957年設立、信越化学工業は1926年設立で、それぞれ60年と90年を超える歴史を持っている。

   中央日報がさらにこう続ける。

「彼が挙げた2番目の理由は、与えられた仕事を黙々と遂行する日本の和の精神だ。泉谷代表は『東レの炭素繊維がお金になり始めたのは投資して41年目から。企業は収益がなくても40年間粘り強く投資し、開発者は匠の精神で武装したままひとつの井戸だけ掘った』と語った。東レの炭素繊維は次世代航空機だけでなく自動車などに用途が拡大しており、いまや東レは最強者だ」
「彼はまた、今年ノーベル化学賞を受賞した旭化成の吉野彰名誉フェローのことも語った。吉野彰氏は1972年から47年間研究一筋だったが、旭化成が彼の研究で金を稼いだという話は聞いたことがないという」

   かといって、「日本企業は停滞している組織では絶対ない」と、泉谷氏は強調するのだった。中央日報が続ける。

「日清戦争当時に無線通信を提供する企業として出発した東芝の場合、144年の間に電話機、火力・水力発電、家電、ノートパソコン、メモリーへと事業を変えていき世界1位になった。東芝は15~20年単位で既存の主力事業と人材を捨て、新たな事業を探して全社的努力を注いで1位になった日本企業の革新事例の1つだと泉谷氏は話した」

日本と韓国の争いで中国が漁夫の利

   そして、「韓国にこうした長期間お金にならなくても、国産化を目指す覚悟があるのか」と問いかけたのだ。

   では、今回の日韓経済戦争の解決にあたり、どうすればよいのか。泉谷氏は記者団の質問にも答えて、こう提案した。

「泉谷代表は『半導体が韓国経済で占める地位を見れば、韓国政府が素材・部品・装備国産化を推進するのは当然だと考える。サムスンが日本から輸入する素材・部品・装備だけで年間約2兆円になる。韓国の半導体がうまくいけば日本に対する貿易赤字がさらに大きくなるため、韓国民の自尊心を考えれば国産化政策は十分に理解できる』とした」
「だが、泉谷代表は『国産化するなら品目をしっかり選定しなければならない。たとえば、7ナノメートル(10億分の1メートル)以下の半導体を作るEUV用フォトレジストは、2年以内に国産化しても工程別、装備別の最適化にさらに3~5年かかる。結局サムスンやSKのEUV工程競争力そのものが落ちるだろう。個人的な考えだが、政治家らはこれを知らないようだ。無条件で国産化したところで日本企業はその時間にさらに遠くを走っているだろう』と語った」

   その間、中国の国家を挙げた「原価引き下げ競争」に韓国は大打撃を受ける。それより、「日本は素材・部品・装備に強いが、韓国は怒らずに得意なデバイスにもっと投資すればよい。(現在、日本の輸出規制が続いているが)韓国は日本の素材・部品・装備企業の韓国誘致を強化して不確実性を減らしていかなければならない」と具体的な提案をしたのだった。

   つまり、日本の素材・部品・装備企業を韓国が誘致すれば、日本政府の規制を受けなくてすむというのだ。泉谷代表は講演を「韓国であれ日本であれ、中国の台頭、米中貿易紛争による中国市場の沈滞に備えなければならない。韓国と日本が争っている時ではない」と、強調したのだった。

(福田和郎)

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