民間信用調査会社の東京商工リサーチは2019年11月7日、全国の中小企業の「後継者不在率」の調査結果を発表したが、意外なことに、農林水産漁業などを押しのけて、最先端業界であるはずのIT企業が一番後継者不足で悩んでいることがわかった。
いったいどういうことか。調査結果をみると――。
「情報通信業」の後継者不在率は「農林水産業」より高い
全国の中小企業のうち、後継者が決まっていない企業の割合が55.6%にのぼった。代表者の年齢別では、60代が40.9%、70代が29.3%、80代が23.8%で、代表者の高齢化が後継者難に拍車をかけている状況が浮かび上がった。
実際、後継者がいないことによる2018年の「休廃業・解散」企業数は過去最多の4万6724社を記録した。代表者が高齢で後継者が決まらない場合、企業の事業継続だけでなく、日本を支える中小企業の存続が危ぶまれる可能性も出てくる。
ところで、産業別に「後継者不在率」の割合をみると、人手不足の影響が深刻な労働集約型の「サービス業」(61.7%)、「小売業」(59.3%)、「建設業」(54.9%)、「運輸業」(52.2%)などで5割を超えたが、じつは最も高かったのが「情報通信業」の74.1%だった=下表参照。ソフトウェア開発などIT関連業種が含まれるため、業歴が浅い企業が多く、代表者の年齢も40代以下と若い世代が多いことが影響しているとみられる。
ただし、これは調査した時点で後継者が決まっていないということであって、「情報通信業」が後継者難による倒産の可能性が一番高いということではない。経営者が若いほど時間的に余裕があるからだ。
後継者の選定から了解を得るまでの承継準備には通常3年以上かかるため、東京商工リサーチでは「経営者が高齢になるほど時間的余裕は少ない。事業継承が困難になれば取引先や労働者も予期せぬ形で販路や勤務先を失う」と、警鐘を鳴らしている。
なお調査は、東京商工リサーチのデータベース(379万社)のうち、2017年以降に後継者関連の情報が蓄積された企業(19万社)を無作為に抽出、分析した。