「あのとき、ああすればよかった」
「なんであんなこと、やってしまったんだろう」
など、過去の失敗に悩む人は少なくありません。
世の中に失敗して落ち込まない人など存在しません。しかし、失敗に引っ張られると行動が阻害されます。失敗をはね返す人は、「心を切り替える技術」を持っているから、次に目を向けられるのです。
「失敗を『はね返す人』と『引きずる人』の習慣」(並木秀陸著)アスカビジネス
アナタは別れた恋人との写真を捨てられますか?
あなたは、いままでの人生をとても大切にする人ですか――。「誰でもそうじゃないの?」と思いますか。たしかに大切なこともあるかもしれませんが、あなたが、これからの未来を生きるうえでは、いままでの人生の思い出が邪魔をすることだってあるのです。
たとえば、ことあるごとに、
「あの頃はよかったなあ」
「昔だったら」
「いまの世の中ときたら」
などと考えてしまう人。こういう人は思い出を大切にしているとも言えますが、悪く言えば気持ちを引きずってしまっているだけです。
もう二度と元には戻ることのない恋人からのブレゼントや、一緒に写った写真などを捨てられない人と、なんら変わりはありません。それがいまの糧となっているならば大切にしてもいいでしょう。そうではなく、そのプレゼントや写真を見るたびに、失恋の気持ちを思い出して引きずっているだけなら、呪いのアイテムとも言えるわけです。
まさに失敗を「引きずる人」。さらに、幾度となく思い出しているうちに、過去と現在を比較する癖がつき、だんだんと過去が美化されてしまうのです。アメリカのジャーナリスト、フィンリー・ピーターダン(Finley Peter Dunne/1867年7月10日~1936年4月24日)は、こんな言葉を残しています。
「過去は常に、今から見れば実際の過去より美しく思える。過去が楽しいのは、過去が今ここにないからにすぎない」
これは、過去の思い出が、実際よりもよく思えてしまう、過去を美化しすぎるものだということです。
中途入社に多い過去進行形の人たち
中途入社で、過去に大手企業でナンバーワンの実績があるという人が入社してきました。役職は営業部長。しかし、なかなか結果が出ません。ことあるごとに社内の会議では、
「前職のM商事でこんなことをしたら笑われますよ!」
「前職ではこのようなことは許されません」
「前職のM商事では......」
と。
社内のスタッフもいい加減うんざり。かなり迷惑そうです。
社長は少しいまの営業のやり方を変えてみたらどうかとアドバイスします。すると、そのM商事出身の彼は不機嫌になりました。強い調子で「私の営業に問題があるってことですか?」と食ってかかります。「問題ないと思っているの?」と社長。するとまた「いや、M商事ではうまくいっていたんですが」と、ひと言。社長もお手上げです。
このように、過去の成功体験から逃れられない人がいます。その思い出や体験が価値を生み出さないことは明々白々です。呪いのアイテムですから、思い切って捨てて、「これからのほうが大切だと切り替えてしまったほうがいいのです。それこそが未来を生き、いまのあなたを大切にしていることにつながるはずです。
著者は、並木秀陸さん。司法書士、社会保険労務士、行政書士など多くの国家資格を所持し、社労士総合オフィスナミキを経営する人事労務の専門家です。
本書には、読書術以外にも「心を切り替える技術」「発想転換の方法」「失敗の活かし方」「持っておきたい習慣」について、並木さんの体験談を交えながら、解説されています。(尾藤克之)