威勢のいい報告書の行間には......
中央日報はこう結んでいる。
「一方、輸出規制により、これまで韓国に部品を輸出していた日本企業の業績悪化の憂慮が徐々に浮き彫りになった。実際、ほとんどの素材・部品・機器品目で、日本の輸出減少幅は韓国に比べて3~4倍以上大きかった」
だから、「韓国の判定勝ち」というのだが、「判定」する審判は誰なのだろうか。
一方、韓国政府機関の報告も似たような結論を出している。聯合ニュース(10月30日付)「日本の輸出規制強化『経済への影響は限定的』=韓国政府系機関」がこう伝える。
「韓国政府系シンクタンクの対外経済政策研究院(KIEP)は10月30日、日本の対韓輸出規制強化による影響と今後の対応をまとめた報告書を公表した。当初は、韓国経済に大きな打撃を与えるとの懸念が強かったが、100日以上が過ぎた現在も、経済への影響は限定的だと分析。逆に、韓国で起きた不買運動などで日本の関連業種が大きな打撃を受けたと指摘した」
影響が大きいと見込まれていた高純度のフッ化水素は、韓国企業が確保した在庫、国産化を含めた仕入れ先の多角化により、まだ輸出規制の大きな影響は出ていない。フッ化ポリイミドも、日本企業が生産するのは素材そのものではなく素材の材料となる物質であるため、やはり影響はわずかだ。レジストは日本企業の海外工場、台湾などから調達しているから影響はない。
「こうしたことから、現段階で韓国企業の生産や株価に与える影響は限定的で、むしろ不買運動などで日本側が打撃を受けている。とりわけ衣料品、ビール、自動車などの業種で日本企業の売上高が急減しており、韓国事業からの撤退を決めた企業もある。また、韓国から日本へ旅行客が急減したため、沖縄など日本の自治体は、観光関連業者への緊急資金支援といった対策に追われている」
報告書はあわせて、仮に日本による輸出規制で韓国の半導体生産が1割減少した場合でも、国内総生産は約0.32~0.38%減少し、輸出は約0.35~0.5%減るだけだという試算も示した。「たいした影響ではない」というわけだが、念のためだろうか、こう結んでいる。
「韓日のあつれきが長期化すれば、東アジア全体の経済にマイナス影響を与えるため、あつれき解消に向けた方策を整える必要がある。また、政府は日本の措置が長期化する場合に備え、素材・部品・装備産業の国産化と供給網の安定を通じた一層の経済体質改善を図るべきだ」
威勢のいい報告書の行間に危機感があふれている気がしないでもないが......。
(福田和郎)