日銀の追加金融緩和、黒田総裁は「やるやる詐欺」
なぜ、このようにフォワードガイダンスを頻繁に変更するのか――。それは、日銀の金融緩和策が手詰まり状態になっていることに他ならない。
ECB(欧州中央銀行)が金融緩和へ方向転換し、FRBも連続利下げを行っている中で、超低金利政策を長い間継続している日銀は、安易に追加金融緩和に踏み切れない状況に陥っている。
つまり、フォワードガイダンスを変更することによって、「時間稼ぎ」のための「リップサービス」を行っているということだ。なぜなら日銀には、どうしても時間稼ぎをしなければならない理由がある。それは、「消費増税後の景気状況」だ。
10月1日に実施された消費増税の影響は、今後徐々に現れてくる。そして、景気の悪化が明らかになれば、政府は大規模な景気対策を行ってくる可能性がある。その時には、日銀も政府と共同歩調を取った金融緩和策の実施が必要になる。そのために、黒田東彦日銀総裁は「なけなしの金融緩和策」を温存するために、フォワードガイダンス変更を使ったリップサービスを行い、時間稼ぎをしているのだろう。
すでに、市場では日銀の追加金融緩和策に対して「やるやる詐欺」と、揶揄される始末だ。それでも、日銀は何としても追加金融緩和策を温存しなければならないのだろう。
ある意味、「消費増税の影響により景気が悪化した場合に、政府と共同歩調を取るため」というのも、立派な政治的な圧力ではないか。あるいは、黒田総裁の安倍晋三首相に対する「忖度」なのかもしれない。
いずれにしても、政治的な圧力に対する米国と日本の金融政策当局の反応は、あまりにも鮮やかなコントラストを描いている。(鷲尾香一)