2019年10月下旬、日本と米国では金融政策当局の会合が行われ、対照的な金融政策の決定がなされた。
米連邦公開市場委員会(FOMC、10月30日開催)と、10月31日と11月1日に開かれた日本銀行の金融政策決定会合がそれだ。
トランプ米大統領、FRBに「マイナス金利」を迫る
米国では、10月30日にFOMC(米連邦公開市場委員会)が開催され、FRB(米連邦準備制度理事会)は政策金利を0.25%引き下げ、短期金利の指標であるフェデラルファンド(FF)金利の誘導目標を年1.75~2.00%から1.50%~1.75%とすることを決めた。7月、9月に続き、3回連続の利下げとなった。
この利下げは、ジェローム・パウエルFRB議長が強調する景気減速を未然に防ぐための「予防的利下げ」が継続されたものだったが、FOMC の声明文では、フォワードガイダンスにおいて予防的利下げのシグナルであった「経済成長を持続するために適切に行動するだろう」という文言が削除された。
つまり、FRBは今回の利下げをもって、いったんは利下げを打ち止めると宣言したわけだ。
FRBの金融政策に対しては、強い政治的圧力がかかっているにも関わらず、明確に利下げの打ち止めを宣言したのは、パウエル議長の英断と言ってもいいだろう。
政治的圧力の元凶はドナルド・トランプ米大統領にほかならない。トランプ大統領は、得意のツイッターを使い、繰り返し、「FRBは政策金利をゼロかそれ以下に引き下げるべきだ」と発言するなど、FRBに対して大幅な金融緩和の実施を迫っている。
今回の利下げ後にも、トランプ大統領は、FRBの利下げ打ち止め方針に対して、「中国ではなくFRBが問題だ」とツイート。「人々はジェイ・パウエルにがっかりしている。ドル相場は製造業を痛めつけており、日独よりも金利を下げるべきだ」と、マイナス金利への金融緩和を迫っている。
トランプ大統領にとっては、2020年の大統領選に勝利するためにも、米国の好景気を維持すること「大命題」であり、それだけにFRBへの圧力は強い。このため、確かに3回連続の利下げは、トランプ大統領に圧力に配慮した面もあったに違いない。