韓国での不買運動がようやく収まり、回復しつつあるとみられていたユニクロの現地での売り上げが6割以上も落ちていることがわかった。
2019年10月31日、韓国メディアが一斉に報じた。ユニクロは起死回生の大型割引セール策に打って出たが、どこが悪かったのだろうか。韓国紙で読み解くと......。
国会議員がカード会社の売り上げから算出
ユニクロの苦境を韓国メディアが一斉に伝えたのは10月31日、「ユニクロ問題」を熱心に追及している国会議員が記者会見を開き、ユニクロ自体は公開していない「売上状況」を独自に調査して発表したからだった。
記者会見に出席したメディアの一つ中央日報(10月31日付)「ユニクロ、ビッグセールも売上61%減...不買運動で厳しく」が、こう伝えている。
「日本の輸出規制のため韓国国内の消費者から不買運動のターゲットになったユニクロの売上額が大規模な割引イベントにもかかわらず減少していることがわかった。与党・共に民主党の朴光温(パク・グァンオン)議員はサムスン・新韓・KB国民・現代など国内カード8社から提出された『クレジットカード売上額現況』のうち、ユニクロの9月の売上高を10月31日公開した。パク議員は『ユニクロの9月の売上高は91億ウォン(約8億5000万円)と、前年同期の275億ウォン(約25億6000万円)に比べ67%減少した』と明らかにした」
パク議員は、国会議員の国政調査権を使って、各カード会社からユニクロの売り上げに関する資料を請求したのだった。その結果、9月だけではなく、10月の前半も落ち込んでいることがわかった。
特に大規模なセールが実施された10月1日~14日の2週間の売上高は81億ウォン(約7億5000万円)だった。これは前年同期の205億ウォン(約19億1000万円)に比べて61%も減っている。
試着の行列ができるほど盛り返した矢先だったが......
じつは、ユニクロはこの10月から大々的に攻勢に転じていたのだ。聯合ニュース(10月20日付)「ユニクロが韓国でのマーケティング強化 店舗数拡大や大幅割引など」が、こう伝えていた。
「日本製品の不買運動が始まった7月以降、新商品の宣伝も最小限にとどめていたユニクロが最近、店舗を増やし攻撃的なマーケティングに乗り出した。冬の繁忙期を前に本格的な売り上げ回復を狙っているとの見方が出ている」
ユニクロは7月に不買運動が始まってから3店舗を閉店したが、その後店舗数を増やし、現在は昨年より1店舗増えて187店舗に拡大。10月から来年の新入社員採用に向けた説明会も開いた。不買運動の影響で失墜したイメージを向上させるため、今年の説明会には新プログラムも導入された。
「また、割引セールに加え、英ファッションブランドのJWアンダーソンとのコラボレーションなど商品マーケティングにも積極的に乗り出した。10月3日から代表商品が最大で半額になる感謝セールを実施している。50%に上る割引率は異例だというのが業界の一般的な見解だ。これに加え、秋冬シーズンを迎えロングセラー商品が売り出され、オンラインストアでは一部商品が売り切れとなった。不買運動が始まってから閑散としていた店内が、最近は試着のために並ばなければならないほど混んでいるという目撃談がSNSに出回っている状態だ」
このため、ユニクロに対する不買運動もようやく弱まったという見方さえ出ていたのだ。それに一気に冷や水を浴びせたのが、10月1日に世界中に公開した人気商品フリースの25周年をアピールするCM動画だった。98歳の女性が、13歳の少女から「私の年くらいの時にはどんな服を着ていたの?」と聞かれ、「80年も前のことは覚えていない」と答える内容で、「慰安婦をからかっている」と批判されたのだった。
10月31日に記者会見したパク議員は、
「ユニクロは大規模な割引イベントセールをしているが、売り上げは改善していない。一部ではユニクロが息を吹き返しているという解釈が出ているが、実際に国内消費者の不買運動は続いている。ユニクロのCMが旧日本軍の慰安婦被害者を冒?(ぼうとく)したとの批判が出た10月18日以降の売上高はさらに落ち込むだろう」
という見通しを明らかにしたのだった。
(福田和郎)