ラグビーもビートルズも英国で生まれた
また、英国の文化や思想がヨーロッパ大陸と比べると、独自性が強いものであることも重要だ。英国人は伝統や形式を重視せず、物事を実利的に進めようとする傾向がある。政治的には中央集権は嫌いで、自由と人権を重んじる。フランスやイタリアやドイツなどのヨーロッパ大陸諸国がおしなべて伝統重視で、権威主義的であるのと対照的である。
議員内閣制、コモン・ロー(慣習法)、立憲君主制、地方自治、陪審員制度...... といった制度は、すべて英国で生まれた。これらは政治的権力が一か所に集中して、硬直化することのないように考えられた仕組みである。
このような自由なシステムのおかげで、英国が産業革命や自由貿易をリードし、さらに現代ロンドンが世界の金融やマスコミや教育等々の多くの分野で世界の中心となってきた、と考えてもあながち間違いではないだろう。
文化に目をやると、ラグビー、サッカー、テニス、ゴルフ、卓球、バドミントン、ホッケーなど多くのスポーツが英国発祥であるのは有名である。ポピュラー音楽の分野では、1960年代のビートルズから始まって、ヘビー・メタルやパンク・ロックなどロックやポップの多くは英国で始まった。それが、米国経由で広まるという道筋をたどった。
オペラ座の怪人、レ・ミゼラブル、キャッツなどの人気ミュージカルもロンドン発であり、それがニューヨークのブロードウェイから世界に伝搬した。一方でイタリア、フランス、スペインなどでは、カトリック教会や王室が強大な支援を行なったこともあり、クラシック音楽や古典絵画が隆盛を迎えた。新しいものを生み出す英国と、伝統文化の保持に力を入れる大陸諸国とでくっきりと個性が分かれているとは言えないだろうか。