決着の兆し? 英国の政治混乱 EUとの関係を「歴史」で紐解くと見えること(小田切尚登)

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「ファイブ・アイズ」との強固な信頼関係

   英国人がそう主張する根拠はどこにあるのだろうか――。英国は長い間、世界のリーダーの一翼を担ってきた。その安定した国力と強力な海軍力を背景に、大英帝国は19世紀には「世界の七つの海」を支配すると言われるほどの存在となった。

   20世紀には第一次大戦と第二次大戦の両方で、英国は勝利した。第二次大戦の主な戦勝国といえば、米国とソ連というふうに日本人は想像しがちだが、英国を含めた3か国が勝ったと考えるべきところだ。

   ヨーロッパでは第二次大戦は自由主義とファシズムとの戦いという色彩が強かったが、ドイツ、イタリア、フランス(ナチスに支配された)といった枢軸国を破り、自由主義の砦を守ったのはイギリスであった。

   1941年にドイツがソ連に侵攻するまで、英国は米国とソ連の助けなしに、いわば単独で戦っていた。戦後、英国は植民地の大半を失い、超大国の地位から陥落することになったが、彼らが「EUは敗戦国が中心に作り上げたもの。なぜその軍門に下らなければならないのか」というふうに考えたとしても無理からぬところがある。

   英国は地理的にはヨーロッパの一部であり続けることは間違いない。しかし一方で、それに劣らぬ重要な国際的な枠組みが二つある。一つはカナダやオーストラリアあるいは南アフリカやインドといった「イギリス連邦」の国々との関係である。53か国が加盟するイギリス連邦には24億人が住んでいて、EU(28か国)よりもはるかに大きな枠組みだ。

   もう一つは超大国・米国との関係である。言語を共有し、理念や思想で共通するところの多い英国と米国は特別の関係を維持してきた。

   そのような多元的な関係性の中で英国は生きていくべきだ、との考えは十分理にかなっている。たとえば安全保障上の連携で有名なものに、ファイブ・アイズ(五つの眼)がある。米国(CIAやNSAなど)、英国(MI6など)、カナダ、オーストラリア、ニュージーランドの5か国がスパイ活動で連携している。スパイ活動で提携できるほど、互いに信頼し合っているというわけだ。EU加盟国には、ここまでの信頼関係はない。

小田切 尚登(おだぎり・なおと)
小田切 尚登(おだぎり・なおと)
経済アナリスト
東京大学法学部卒業。バンク・オブ・アメリカ、BNPパリバなど大手外資系金融機関4社で勤務した後に独立。現在、明治大学大学院兼任講師(担当は金融論とコミュニケーション)。ハーン銀行(モンゴル)独立取締役。経済誌に定期的に寄稿するほか、CNBCやBloombergTVなどの海外メディアへの出演も多数。音楽スペースのシンフォニー・サロン(門前仲町)を主宰し、ピアニストとしても活躍する。1957年生まれ。
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