年間2万人の患者が来院、医師の妻が育てた病院ビジネスの手法

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   駅前に新たに整備されたビルにはたいていクリニックが入っている。「集患」効果を上げるため診療科目が異なる複数の場合もある。一つの建物にさまざまなクリニックと薬局が入る医療モールも増えている。現代的な医療ビジネスのスタイルの一つだ。

   それをよしとせず、独自にビジネス手法を学び、徹底したマーケティングなどで人気クリニックを作り上げ、その舞台裏を明かして注目を集めているのが、医師の妻が綴った一冊だ。

「医師の妻がノウハウ0から人気クリニックを作り上げた 業界の常識にとらわれない経営」(鈴木恵子著)クロスメディア・パブリッシング(インプレス)
  • 医療施設の30%は赤字…… ビジネス手法が必要だ
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夫の開業を機に経営者に

   著者の鈴木恵子さんは、静岡県の眼科クリニック事務長。短大卒業後、保険会社に勤務。その後、米国留学を経て25歳のときに眼科医の夫と結婚した。本書は、17年前の夫の開業にともない事務長としてその全般に携わり、人気クリニックに育てあげるまでを振り返った。

   「非常識なことばかり」という「医療業界の常識」に立ち向かい、開業当初は1日数十人だった患者数が、年間2万3000人に至るまでの奮闘が語られる。

   「医は仁術」という江戸時代から用いられている格言をもじって、いまでもたまに「医は算術」などと言われることがある。もっとも現代では、少し前と使われ方が変わっていて、高度化、高額化した医療機器の購入が病院経営に大きく影響することなどを指していうらしい。いずれにしても、医療におけるビジネス重視を皮肉ったものだが、本書によれば、たいていの医師は「算術」や経営、ビジネスには疎い存在という。

   だから医師の開業となると、ほとんどの場合、一般的なビジネスの起業とは異なり「人まかせ」。開業コンサルタントへ丸投げし、重要な判断も医師自身が行わず、製薬会社や医療機器販売会社が代役するのが慣例になっているという。

   コンサルタントは、どこかの医師のちょっとした開業意思、開業計画の話しを聞きつけるとセールスに訪れ、医療モールでの開業を勧誘する。内装も設備も用意されたパターンから選ぶようになっており「半年で開業」がセールスポイント。つまり、勤務医などの現職の仕事をぎりぎりまで続け、シームレスな開業につなげられることがウリらしい。「それが本当なら、非常識なことではないかしら」と著者は思っていたという。

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