人材不足を背景に、企業が社員の紹介を通じて人材を採用する「リファラル採用」「リファラル転職」への注目が高まっている。
人材サービス大手のエン・ジャパンによると、運営するミドル世代のための転職サイト「ミドルの転職」で35歳以上の利用者を対象に「リファラル転職」について調査したところ、約2000人の回答者のうち、66%が友人や知人から転職を誘われた経験があり、75%が「リファラル転職をしたいと思う」と答えたことがわかった。2019年10月21日の発表。
リファラル転職で目指せ年収1000万円!?
「リファラル(referral)」は英語で、「求職者の紹介、推薦」などの意味。調査によると、「これまでに友人・知人から『自社に来ないか?』と誘われたことがあるか?」の問いに、66%が「ある」と回答した。
業種別で「ある」と回答した割合が高かったのは、「コンサルティング」(79%)、「IT・インターネット・ゲーム」(77%)、「建設・不動産」(76%)だった。最も低い「メーカー」でも、57%が「ある」と答えており、知人などのネットワークを通じたスカウティングが盛んなことがうかがえる。
誘われたことが「ある」と回答した人に、その相手について聞いたところ、最も多いのは「取引先の担当者」の31%。次いで、「元同僚」(28%)、「元上司」(18%)、「学生時代からの友人」(10%)の順。
調査では、回答者に年収について「1000万円以上」か「1000万円未満」か聞いたが、スカウトした相手が「元同僚」と「元上司」の場合に、回答者の年収は「1000万円以上」が「1000万円未満」を上回った。「元同僚」は「1000万円以上」が31%だったのに対して「1000万円未満」は27%。「元上司」では「1000万円以上」が20%、「1000万円未満」が18%だった。
マッチング不適の改善に効果か
一方、「リファラル転職」を勧められた経験者のうち、半数以上が「選考は受けなかった」(55%)。その理由は、「友人・知人との関係性が崩れないか心配になったから」(38%)が最多。次いで「事業内容・仕事内容に興味を持てなかったから」(30%)で、この上位2つからやや離れた3番目は「やりたいことが別にあったから」(19%)だった。
誘いを受けて選考に臨んだのは40%。そして29%が入社、9%が辞退、2%が不採用だった。
スカウトされて選考に進んだ人は4割にとどまっているが、調査の「転職を考えた場合、リファラル転職をしたいと思うか?」という質問には、75%が「したいと思う」と回答。年収別にみると「1000万円以上」で82%が希望を表明し「1000万円未満」(74%)を上回った。理由としては「友人・知人が勤める会社なら安心感があるから」(58%)が最多で、「自分の能力・経験を正当に評価されていると感じるから」(46%)が続いた。
労働市場をめぐっては、新卒採用ばかりか転職市場でも近年、マッチングの不適による早期退職の問題が広がっているという。リファラル採用は、企業の採用コスト削減への寄与もあり、対策の一つとして有力視されていて、とくに中核人材採用での利用割合が高まっているという。
なお調査は、2019年8月30日から9月30日に、エン・ジャパンのサイト「ミドルの転職」のユーザーで35歳以上の人を対象に行った。有効回答者数は、2123人。