2019年10月21日からテレビ東京系で中谷美紀さん主演のビジネスドラマ「ハル~総合商社の女~」が始まった。ヘッドハンティングされたシングルマザーが、縦割りと派閥のしがらみに縛られた巨大商社の中で孤軍奮闘する物語だ。
インターネット上では
「痛快だ!働く元気をもらえる」
「巨大資本の悪を成敗する女黄門みたい!」
と、評価が高まっている。ビジネスパーソンを虜にするドラマの魅力はどこにあるのか。
シングルマザーと元夫バディーによる大企業改革物語
物語は、米国ビジネス界で活躍したシングルマザー・海原晴(かいばら・はる)=中谷美紀=が、大手総合商社「五木商事」の社長直々のヘッドハントにより帰国。エリート集団である経営企画部の部長補佐に就任するところから始まる。なんと、そこで待ち構えていた直属の上司の部長、和田寿司(藤木直人)は10年前に離婚した元夫だった。
じつは、社長に推薦して晴を五木商事に呼んだのは和田だったのだ。和田は晴に「お前の型破りの力で、この腐りきった五木商事に風穴を開けてくれ」と打ち明ける。五木商事は、社長(初回では配役不明)と副社長・高山雄一郎(奥田瑛士)が派閥抗争をしていた。
高山は社長のヘッドハンティングで乗り込んできた晴の存在がおもしろくない。各部署にいる派閥の部下たちに命じ、ことごとく晴の仕事の邪魔をさせる。高山は和田にも「あの女を必ずつぶせ」と命じる。和田は「承知しました」とへつらいながらも、こっそり裏から手を回し晴の仕事をやりやすくするのだった。
そう、このドラマは、保守的な副社長一派が支配する停滞した大組織にあって、慣習や数字データに縛られず、「私は楽しく仕事がしたい!」と公言して社内に新風を吹き込んでいく晴と、それを陰から支える元夫・和田のバディーによる大企業改革の物語なのだ。
ドラマは、プロデューサーを務める栗原美和子さん(共同テレビ・元フジテレビプロデューサー)の実体験から生まれたオリジナル企画だ。栗原さんは番組制作発表の記者会見で、こう語っている。
「私がフジテレビに入社した1987年は、男女雇用機会均等法が施行された翌年。当時はドラマの現場に女性スタッフがほとんどいなかった。いまは増えたけれど、管理職はまだいません。私も部長会議では紅一点です。ほかは全員スーツ族。中谷美紀さん演じる主人公がそういう状況にあります」
女性が楽しく働ける職場は、男性も楽しく働ける。それを追求したドラマなのだ。