入口の大きなガラス戸を開けると、子どもと大人たちの声で、なにやら本屋らしからぬにぎやかさに包まれる。
2017年5月5日、こどもの日にオープンした「ブックハウスカフェ」は、神保町唯一の新刊の児童書専門店だ。
店内中央にカフェ、奥にはキッズスペースやギャラリースペースがある。2階は洋書を専門に扱う北沢書店で、入り口すぐに設置された螺旋階段が繋いでいる。
両側の背の高い本棚や、カフェスペースを区切る背の低い本棚には色とりどりの児童書や絵本が並ぶ。天井に描かれた「太陽と月」が優しい笑顔で店内の様子を見守っている。
この日(2019年9月16日)は、店内で二つのイベントがあった。「おはなし ぎょうじのえほん」シリーズ(子どもの未来社)の読み聞かせ&工作のワークショップは、11時30分と12時30分から。季節に合わせたおはなしを取り上げた。
本の著者は、堀切リエさん。絵は、村田エミコさん、石井勉さん、松田シヅコさん、河野あさ子さんが手がけた。「おはなし ぎょうじのえほん 秋」がそれで、子どもたちが四季の行事を楽しく学ぶことのできるイベントに仕立てていた。
読み聞かせは、笛やトライアングルなどの楽器で演出しており、店内の子どもたちは目を大きく開けて、おはなしに集中している。大人もつい足を止め、見入っていた。
そのあとは、店頭の小さなテーブルに移動。季節にまつわるモチーフの工作ワークショップが始まる。大人も参加して、みんなで子どもたちの制作を温かく見守りながら、工程は進む。折り紙と紙粘土で、小さなお月見団子とウサギができ上がった。
遊び心に満ちた書店
中央のカフェスペースでは13時ごろから、難病の子どもたちとその親御さんを招いた交流イベントが始まる。本に囲まれた穏やかな空間の力もあるのか、参加された人の表情も柔らかい。カフェスペースからは美味しい昼食の香りがする。ついつられてお腹が減り、食べ物をテーマにした絵本を探してしまう。こちらのスペースでも、絵本の読み聞かせが。和やかな雰囲気だ。
ブックハウスカフェでは毎日のように、さまざまなイベントが企画されており、大人も子どもも、いろんな人が出入りする。本屋らしい、静粛な雰囲気はあまり感じられない、伸び伸びとした活力に満ちた空間が広がる。
エプロンをつけて店内を忙しく動き回っていた代表の今本義子さんは、イベントの様子を優しげに眺めながら、「本屋であることを活かしながら、いろんな人に楽しんでもらえる空間をつくり出したい」と、話す。
2階フロアにはピアノが置かれたスペースもあり、夜にはジャズの演奏会が開かれることもあるというから、驚いた。
そうだ! ブックハウスカフェは来るものを拒まない。本を買うだけの場所ではなく、本に囲まれた中で、子どもも大人もくつろぎながら、むくむくと好奇心が沸いてくる場所。神保町でも、遊び心に満ちた書店なのだ。