「保育士」の仕事に対するイメージは、従前から「給与が安く、長時間労働で人手不足」といったものが根強い。
果たして、保育士の給与や労働環境の改善は進んでいるのだろうか。
保育士の「給与引き上げ」消費増税分を活用
2016年4月にスタートした「子ども・子育て支援新制度」では、消費税率引き上げによる増収分の活用や5年間を計画期間とする「市町村子ども・子育て支援事業計画」、「企業主導型保育事業」といった保育事業の拡充とともに、「幼稚園や保育所、認定こども園などの職員の処遇改善」が盛り込まれた。
さらに安倍晋三首相は2016年、「『1億総活躍社会』に関する国民議会」で保育および介護の職場での深刻な人材不足を解消するため、保育士や介護士の給与を引き上げると表明した。
そうしたなか、内閣府は2019年10月10日、「令和元年度 幼稚園・保育所・認定こども園等の経営実態調査(速報)」を発表した。
この調査は子ども・子育て支援新制度施行の5年後の見直し際に、幼稚園・保育所・認定こども園などの経営実態や職員給与の状況を把握することを目的としている。
調査対象は保育所、幼稚園、認定こども園、地域型保育事業所で全国の8847か所(うち私立5273か所)から有効回答を得た。調査の項目として、職員1人当たり給与月額が公表されている。
それによると、各施設の職種ごとの給与は、以下のとおりとなっている。
いくつか聞きなれない事業があると思うので、簡単の保育事業の説明をしておこう。「家庭的保育事業」とは、日中、家庭で子を保育できない保護者に代わって、自治体の認定を受けた保育者(家庭的保育者)が居宅などで保育を行う事業だ。
「小規模保育事業」は「認可保育所」の一種で、預かる子どもの対象は「0歳~2歳児」で、定員数は「6人~19人まで」となっている。保育所が定員数20人以上となっており、それよりも小規模のものになる。A、B、C型の違いを簡単にいえば、A型は全員が保育士、B型は半数以上が保育士、C型は家庭的保育者資格となっている。「事業所内保育事業」は企業が保育事業を提供するもので、A、B型の違いは小規模保育事業とほぼ同じ。20人以上というのは保育所と同様の基準になる。