株式市場には、アノマリーと呼ばれる現象が存在する。
アノマリーとは、野村證券の用語集の解説によると、「効率的市場仮説では説明のつかない証券価格の変則性。明確な理論や根拠があるわけではないが当たっているかもしれないとされる相場の経験則や事象である場合が多い」としている。たとえば、「1月効果」「5月に売り逃げろ」「曜日効果」「モメンタム効果」「リターン・リバーサル」「低PER効果」「小型株効果」といったものがそれだ。
ところで、季節性のアノマリーのひとつに、「月初の株高」というものがある。「月初の株高」とは、その名のとおり「月の初めは株価が上昇しやすい」という経験則。今回は、この説を、統計的に検証してみた。
総損益は右肩上がりに!
「月初の株高」の検証ルールは、「毎月1日の寄り付き(9時)に日経平均株価を買い、大引け(15時)で売る」というものだ。
なお、今回の検証は簡略化のため、1日が株式市場の休場日で取引できない場合は、その月は売買しないことにとした。
その結果は、以下のようなものとなった。
1999年10月から2019年9月までの総損益の推移を示すグラフは、右肩上がりの推移を表している。
1999年10月から2019年9月までの20年間で、取引は160回あった。そのうち、勝ち取引は93回あり、勝率は58.13%だった。
また、具体的な利益と損失の内訳に目を移すと、利益の合計は1万1035円、損失の合計はマイナス6041円となった。プロフィット・ファクター(PF:総利益額÷総損失額)は1.83%と、良好な数値を示していた。
一般的に、プロフィット・ファクターと呼ばれるこの指標の数値が高いほど、その戦略の利益性が高いとされる。
つまり、検証の結果から、「月初の株高」のアノマリーは、効果があるといえそうなのだ。
「つみたてNISA」は月初に買い付ける傾向がある
ところで、なぜ「月初の株高」と呼ばれるアノマリーは存在しているのだろうか――。それについては諸説あるものの、積み立て投信(「つみたてNISA」など)の資金が、月の初めに株式を買い付ける傾向があることなどがあげられる。
また、従業員持ち株会と呼ばれる、上場企業の社員らの給料から毎月、一定額の自社株を買い付ける組織からの株式市場への資金の流入なども指摘されているようだ。そのほかにも、年金ファンドや外国人投資家の売買が、月初や月末に集中しやすいことも理由のひとつとして考えられている。
ちなみに、日経平均株価は2016年7月から2018年2月まで、20か月連続で「月初の株高」が観測されていたようだ。
その理由としては、当時の堅調な株価の推移に加えて、アベノミクス効果による個人投資家の株式投資への関心の高まりや、NISA(少額非課税投資制度)や個人型確定拠出年金(iDeCo)といった制度のスタートなどがあげられるだろう。
「月初の株高」は、株式市場で知られているアノマリーの一つだ。すべてのアノマリーに合理的な説明がされているわけではないものの、相場をよく知ろうとするなら、アノマリーについて調べてみると何かの役に立ちそうな発見があるかもしれない。(ブラックスワン)