先行するデパートと量販店
中国人客による「爆買い」がよく見られたのはデパートと量販店。それが鳴りを潜めたころは経営への影響も懸念されたものだが、インバウンドの買い物熱は依然高く、デパートと量販店では、外国人材を積極的に採用してインバウンド需要の取り込みに努めている。日本人の労働力不足を補うことにもなり効果は単体にとどまらない。本書では、三越伊勢丹の三越銀座店と、ビックカメラの例が紹介されている。
この両店に限らないが、とくに店舗で客と接する店員の場合、難しいのは日本流にこなすことだ。三越、ビックとも、先輩店員がしばらく付き添って研修を行う。三越では、店がある銀座の飲食店や病院、駅などの周辺施設への案内も必須。三越銀座店によれば、こうした丁寧なアテンダントを地道に行うことで外国人客の間では「何か困っていることがあれば銀座三越に行けばすべてわかる」といった口コミが広がっているという。
ビックカメラはインバウンドの需要の高まりを感じた15年ころからまとまった人数の採用をスタート。中国、韓国のアジア系を中心に、本書によると、100人強が働いている。SNSで外国人スタッフの存在が知れ渡り、その外国人スタッフを名指しで同国の客が来店するケースも。スタッフが信頼を得て客がリピーターになる確率も高い。
「内なる国際化」で外国人スタッフが貢献するのは接客、客集めばかりではない。ビックカメラによると、外国での流行などをキャッチしやすくなり商品の仕入れや配置に役立てられるという。日本ではあまり販売実績がなくても、国によって大流行しているというアイテムも実は少なくない。そうしたトレンドをとらえてビジネスの活性化につなげられるというわけだ。
この「内なる国際化」はまだ緒についたばかりで課題もある。ビックカメラでは、スタッフが多国籍化し、マネジメント側で外国語が分からず「正しい接客ができているか把握できない」点をあげる。ウズベキスタン人の店員がウズベク語で同国の客に応じているときは日本人上司が理解できず説明が正確か確認できなかったという。また、中国人店員が多いため、春節で休暇希望が集中。店側にとってもかき入れ時であり、毎年のように頭をいためているそうだ。
「会社成長のカギは外国人材の活躍だ! すぐに役立つ3つの基本と実例10」
グローバル人材キャリア支援協会著
双葉社
税別1400円