些細なことで揺るがない「鈍さ」こそ出世の秘密
調査ではさらに人間の基本的な性格特性を表す5つの因子のデータも比較した。次の5つだ。プロセスジャパンでは以下のように性格分析をする。
(1)外向性:報酬への反応の度合い。より高い給料、高い地位を求める。
(2)神経質傾向:恐れへの反応の度合い。警戒心が強い、安全と感じるまで努力する。
(3)勤勉性:自己抑制の度合い。目先の報酬にとらわれず、自己をコントロールできる。
(4)調和性:他者への配慮。他者を助け、調和的な対人関係を保つ。
(5)開放性:心の連想の広がり。高い感受性を持ち、思考が広がる。
この5つの調査結果をみると、役職者は「外向性」「勤勉性」「調和性」で、一般の人より高いポイントが出た。「開放性」がほぼ同じだった。特に顕著な差を示したのが「神経質傾向」で、一般の人の平均が0.77ポイントなのに対し、役職者では0.62とかなり低かった=図2参照。
「神経質傾向」は、不測の事態や脅威に対して敏感に反応する度合いを示しており、この性格のポイントが高いと、何事につけてネガティブ思考になりやすい。逆にポイントが低いと、恐れに対して鈍感であり、ネガティブ思考に陥ることが少ない。
「鈍感力」とは作家・渡辺淳一氏の著作で有名になった言葉だ。シャープで、鋭敏なことが優れていると世間では思われているが、本当にそうなのか。渡辺氏は、些細なことで揺るがない「鈍さ」こそ、生きていく上で最も大切で、源になる才能だと説き明かした。苦しいことや辛いこと、気が落ち込むときにも崩れず立ち上がって、前へ向かって明るく進んでいく。「鈍感力」はそうした楽天主義を生んでいく。
若くして出世する人は、「自己肯定感」と「鈍感力」という明るさがパワーの源だったというわけだ。
(福田和郎)