高速処理で可能になったディープラーニング
現在の3度目のブームは、その兆しが見え始めたの2000年前後という。コンピューターの処理能力や、通信の速度が増すなど環境の飛躍的向上があり、新技術が現実に有用な技術として利用可能になってきたころだ。兆候が現れてからもうすぐ20年となるが「ブームは鎮火するどころか継続しており人工知能の社会への浸透が着実に進んでいる」。著者は「今回は過去2回とはどうも様子が異なる」と指摘し、今後さらに高性能化、高度化することを見越す。
その主役はディープラーニング。実は、ディープラーニングが高い性能を発揮するためには、従来の機械学習に比べて多くの学習データを必要とし、高速なコンピューターが必要となるのだが、00年から19年までの間に、コンピューター技術や情報通信技術の進化がすさまじく、一気にAIを表舞台に押し上げたのだ。
ディープラーニングは、日本語で「深層学習」と呼ばれ、これまでにもAIの推進力として紹介されている。本書でも、画像認識能力ですでに人間の能力を上回っていることなどを解説。さまざまなシーンでの「認識」に使われていることは、そういうことだったのかと理解が進む。
本書では「知能」「意識」など人の能力について議論したあとに「人工知能は人を殺せるのか?」というテーマに踏み込んでいく。
人工知能は、「知能」あるいは「意識」、それに「意志」にしても、人が学習データとしてインプットしディープラーニング処理され機能する。「人工知能が自らの意志で人を殺すか? という問いに対しては、道具型人工知能であれば、それは起きないものの、今後登場する自律型人工知能であれば自らの意志で人を殺すことはある。それは絶対の禁忌ではなく、人工知能が導入される社会の『コンセンサスが得られる限り』においては、人を殺してもよいということなのだろう」という。
「AI兵器と未来社会 キラーロボットの正体」
栗原聡著
朝日新聞出版
税別750円