マネックスグループの仮想通貨取引所、コインチェックが「ユーティリティ・トークンによる資金調達支援事業の検討開始について」というプレスリリースを、2019年8月22日に発表しました。
これを「IEO(Initial Exchange Offering)」と言い、取引所の資金調達モデルのことです。
一方、取引所の資金調達モデルには「ICO(Initial Coin Offering)」もあります。ICOも、資金を調達したい企業や事業プロジェクトが独自の仮想通貨を発行・販売して資金を調達する手段ですが、この両者はどう違うのか、「IEO」とはいったい何なのかを解説します。
「IEO」はIPOの仮想通貨バージョン
IEOとは、企業や事業プロジェクトが仮想通貨による資金調達を行う際に、仮想通貨取引所が主体となり、デューデリジェンスや投資家の本人確認から販売までを行うことをいいます。
取引所はこれらの業務を行うことにより、企業などの発行体から手数料を得るビジネスモデルが成り立っています。
企業や事業プロジェクト側が主体のICOと異なり、取引所の利用者しか、仮想通貨を購入することはできません。しかし、発行する仮想通貨を取引所が審査することから、詐欺の多かったICOよりも信頼感が格段に上がるとされています。
また、ICOでは投資した仮想通貨が、いつ、どの取引所に上場するのか不透明でした。しかし、IEOではすでに上場する取引所も、時期も決まっており、仮想通貨の売却ができないリスクはありません。
IEOは、ICOのデメリットを補っている資金調達方法と言えます。
上場の審査が厳格で、上場時期が決まっていることから、新規株式公開(IPO)の仮想通貨バージョンともいえそうです。
◆ IEOの利点 ・仮想通貨取引所が主体の資金調達方法
・上場する取引所と時期が決まっている
・発行体の与信調査も厳格
「IEO」が人気となったワケ
2019年1月、ビットコインは80万円から30万円台にまで下落し、仮想通貨市場は低迷していました。そんななか、取引所大手のバイナンスが1月下旬に行ったビットトレント(BTT)のIEOでは、約7億7000万円分の仮想通貨が15分以内で完売。これがIEOブームの火付け役となりました。
その後は、他の取引所もIEOを開始。取引所大手のフォビ(Huobi)が行った最初のIEOであるトップネットワーク(TOP)は、13万人が参加。購入できたのは、わずか3764人でした。取引が始まると、価格は急騰。IEO価格から最大19倍まで急騰しました。
こうなると、ICOブームのようにIEOへ投資資金が集中。4月~6月ごろに、IEOにより上場した仮想通貨は、ビットコインの急騰も後押しとなり2倍、3倍は当たり前というような状況になりました。
IEOへの参加方法から購入までの流れを、簡単に説明しておきます。
取引所大手であるバイナンスを例にあげましょう。
IEOでは、専用のサービス(バイナンスでは、バイナンスローンチパッド)があり、まずはそこで本人確認を行う必要があります。
そして、IEOの参加ができるチケット請求する必要があります。この時に、取引所の仮想通貨を保有することでしかチケットを請求する権利は付与されません。また、株式のIPOと同じ抽選方式であり、誰でも買いたい金額を買えるわけではありません。
たくさん資金があればあるほど、IPOで当選しやすい証券会社と同じイメージですね。
◆ バイナンスのIEOの流れ
【まとめ】
IEOは、取引所にとっても個人投資家を集めることができ、また、自社が発行する仮想通貨を買ってもらえる、よい機会となります。
仮想通貨を発行する企業などにとっても、取引所の「お墨付き」を得られ、投資家にとってもICOよりリスクを限定することができます。
IEOはまさに「三方よし」の資金調達手段といえそうです。
(ひろぴー)