昭和の品を発掘
江崎グリコの営業マンから、「前掛け」に商機を見つけた男性も、積極的で気配りの利いた得意先めぐりがビフォーのストーリーとして語られる。
「前掛け」は、昭和のころには、酒屋や八百屋などの店主が身に着けていた「胸当てのないエプロンの頑丈版」。昭和ブームなども手伝って、この「前掛け」が復活・普及の動きをみせているが、それを担っているのが、グリコの元営業マンだ。
サラリーマン経験は5年足らず。だが、フットワークと気配りで「ペーペーでしたけど、3年目くらいからは先輩を差し置いてリーダー的に振る舞えるようになった」という。
グリコに入社してスーパーなどを回るうち「他社の営業はたいてい自分のところの商品しか説明しない」ことに気が付いた。「だからバイヤー(小売店の仕入れ責任者)はその商品の全体像をつかみにくい。ぼくは、世の中で今、どのような商品が売れているか、トレンドは何かを、などを簡単にまとめ、バイヤーに説明した。バイヤーだって自分の成績が上がるような情報がほしい。喜ばれました」という。これで先輩らを出し抜いた。
このポジティブさを生かして元グリコ営業マンは、平成に入り絶滅しかかっていた「前掛け」を見つけ出し、社業を軌道に乗せた。
本書に登場する40人それぞれの「成功の閾値」は、著者が言う通り、それぞれに違うが、ポジティブマインドはほとんどの人に共通しているようだ。
「さらば!サラリーマン 脱サラ40人の成功例」
溝口敦著
文藝春秋
税別850円