客が欲しがるものは何でもそろえた
本書で紹介されている成功例をつぶさにみると、全員に共通というわけではないが、起業に立ちふさがる困難を突破できる人たちはポジティブなマインドの持ち主で、それは起業のビフォー時代からすでに発揮されている。
大手旅行代理店に長らく勤務し「役員」目前で退職、55歳のときに葬儀会社を設立した男性。都内の支店勤務時代には、得意先の視察旅行で案内役を務め年間200日も海外で過ごす生活だったが、まるで苦しいとは思わなかったという。そうした勤務ぶりから周囲に引き立てられ、自らは望んだものではないが昇進が続く。
葬儀会社をやりたいという気持ちを募らせとうとう決断。しかし、葬儀のことは何も知らなかった。だが持ち前のポジティブさで道が開け、9年後に社員9人を抱えるまでに成長した。
三菱系の建機会社で役員を務め定年退職後、生分解性プラスチック製造に竹粉を利用するなど竹林ビジネスを起業した男性は、低迷していた西関東の販売会社の社長を任され、その牽引力で立て直した実績を持つ。
「私が立てた目標は、得意先が必要とするものは、なんでも揃えてお届けすること」とし、自社で扱っているかどうかに関係なく顧客の役に立つことだけに集中したという。「社員にやる気が出れば、決して難しい仕事じゃない。もちろん社員の尻を叩くだけでなく、成績のいい人は褒め、優秀者は表彰する」。やがて販売会社は黒字に転換、全国の販社のなかでもトップの成績を上げるまでに立ち直った。