日本経済団体連合会のトップをはじめ企業経営者らは近年、終身雇用制の継続困難を口にする機会が多くなり、雇用される側のあいだでも転職が珍しいことではなくなっている。双方をターゲットにした人材サービス会社のテレビCMもオンエアの頻度を増しているようだ。
勤務先以外の道を進みたいサラリーマンにとっての選択肢は、転職のほかに、起業・独立がある。だが、その成功率は1~2割程度とみられリスクが高く、テレビCMもない。本書「さらば!サラリーマン 脱サラ40人の成功例」(文藝春秋)は、先人たちのサクセスストーリーを集めた格好の教科書だ。
「さらば!サラリーマン 脱サラ40人の成功例」(溝口敦著)文藝春秋
著者の溝口敦さん、自らも脱サラ経験
著者の溝口敦さんは、暴力団など反社会的存在をテーマにした数々の作品、レポートで知られるノンフィクション作家。出版社勤務からフリーに転じた独立経験を持ち、「脱サラ」に特別な思いがあり、同じように独立あるいは起業した人たちの取材も精力的に重ねていた。それらは「さらばリーマン」のタイトルで月刊誌「ウェッジ」で連載。その数は約130本にのぼる。本書は、そのうちの40人分を選び単行本化したものだ。
「起業の夢を実現する」「故郷で第二の人生を」「職人として生きる」「趣味を活かす」「人の役に立ちたい」―というテーマごとの5章立て。それぞれ8人についての起業ビフォーアフターの物語が収められている。
40人分のストーリーのなかで折に触れて語られるのは脱サラ起業の難しさだ。
「安易な起業は失敗する。たとえばラーメン店である。ラーメン店は開店して1年で4割が閉店するとか。3年たてばさらに3割が閉店、3年以上営業できる店はわずか3割にすぎないとされる」
「100人が起業する。成功するのはそのうちの1人。なんとかその仕事で飯が食えるようになるのはぜいぜい10~20人。残りの人たちは大失敗に終わる」
「脱サラして起業しても、8~9割は失敗する。そのなかで前職と違う仕事に飛び込み、一国一城の主となった。珍しいケースであり、学ぶことは多そうである」