労働時間の減少は学びの増加に関係なし
では、どのような要因があるときに、学びが得られるのか。調査では、仕事をめぐる環境や、職務の重要度・自律度、専門職志向などについて複数項目にわたり質問。回答を検証したところ、高適応群と低適応群との間で「学びの有無に有意な差が見られた」。その検証結果から「新しい学びがあるかどうかは、個人属性よりも、学びが必要とされる環境や職務があること、キャリア見通しや専門職志向が育まれていることに影響を受けることが示唆された」と報告されている。
年代別の「学びの有無」については統計的な差は見られず、また、役職や学歴による差もなかった。
「働き方改革」により、労働時間の短縮が進められていることもあり、調査では、労働時間と学びの関係についても検証。回答者を、月間140時間未満~同240時間以上のなかで20時間ごと7群に分け、それぞれの「現在の学び」と「中長期の学び」との関係をみたところ、ともに、「あった」「どちらかといえばあった」が最も多いのは「月間240時間以上」の群。だが、月間労働時間群と学びの有無に統計的に有意な差はなし。「今回の結果からは少なくとも、労働時間が短いことと学びの多さ、労働時間が減少することと学びの増加には関係が見られなかった」と報告された。
リクルートマネジメントソリューションズ組織行動研究所の佐藤裕子研究員は「今回の調査では、うまく学べている人の背景には、キャリア意識の高さなどの個人要因だけでなく、新しい学びを必要とする裁量度の高い職務、成果と成長を求め関わりあい学び合う職場、一人ひとりにあった学びを支援する制度や仕組みがあることが見えてきました。従業員に多様な学びを提供するために、人事ができること、すべきことを考えるヒントになれば幸いです」と述べている。
なお調査は、従業員300人以上の企業に勤務する20~50代の正社員を対象に2019年6月、インターネットで実施。有効回答者数は457人。回答者の一般社員、管理職別は、一般社員78.6%、部下を持つ管理職が14.9%、部下を持たない管理職が6.3%で、その他0.2%。最終学歴別は、中学・高校・高専・専門学校・短大が28.5%、大学61.5%、大学院修士9.8%、大学院博士0.2%。