「時短で成果を上げるには自分をプロデュースする力を」
――投稿者を批判する意見の中に多いのは、「時短なのにキャリアアップの勉強をするのは権利の濫用」という考えです。時短の人が通勤時間中とはいえ、勉強してはいけないのでしょうか。
川上さん「まず原則としては、勤務時間外はお昼の休憩時間であっても、自由に使える時間です。権利の濫用には当たりません。ただ、通勤時間を使ってキャリアアップの勉強をすることに対してまで批判的な声が多いのには、大きく2つの理由があると思います」
「一つは、『時短』=『職場のお荷物』であり、時短勤務者は周囲に迷惑をかけるというイメージが前提になっていること。その前提に立つと、勉強に費やす時間を少しでも勤務時間に当てて迷惑の度合いを下げるべきだということになります。もう一つは、投稿者さんの資格取得及びキャリアアップが、会社や周囲の助けに結びつかないと思われている可能性があることです」
――なるほど。時短で職場に迷惑をかけているだけでなく、勉強時間を転職か何かの自分の利益だけに使っているではないかという反発ですね。
川上さん「そのとおりです。投稿者さん個人の利益にしかならず、会社や周囲の人たちの利益にはつながらないと認識されているとしたら、感情的に批判的な声が出てしまうでしょう。逆に考えると、投稿者さんの資格取得やキャリアアップが、会社や周囲の人たちの利益にもつながることを示すことができれば、周囲の反応も変わってくる可能性があると思います」
――今回の投稿騒ぎのように、時短の人が「職場のお荷物」という思い込みから抜け出るために、成果を出して見せるには何が大切でしょうか。
川上さん「成果を出して周囲に認めてもらうには、まず出すべき成果を明確にすることから始める必要があります。いつまでに、何をどのレベルでこなせばよいのかを洗い出し、上司や同僚と共有して目線を合わせることが第一歩になると考えます。そして、時短でもフルタイム勤務者と遜色ない成果が上げられるよう、ご自身の実力をつけることです。自分という人材をプロデュースする力が問われています。」
「実力のつけ方は、担当職務の内容によっても変わってきますが、仮に1日8時間働いている人が出す成果を100とした場合、いま1日4時間しか働けないのであれば、時間当たりの成果を2倍(生産性を2倍)に引き上げれば成果は変わらない計算になります。実際にはそのように機械的に測れるものではありませんが、考え方として認識した上で、フルタイム勤務者と遜色ない成果が上げられることを客観的に証明できるようにすることだと考えます」
――常に、具体的な成果のラインを意識して、レベルアップを目指すわけですね。
川上さん「はい。投稿者さんがもう少し周囲とうまく協調して、時短勤務者として周囲が認める成果を出し、会社が時短勤務者にとって働きやすい環境となれば、後進たちに大きな希望を与えることになります。もしそれが実現できれば、資格やキャリアアップの勉強の意義は大きいはずです」
(福田和郎)