高齢化社会の中国で急拡大する介護ニーズ 日本は「強み」を再確認すべし!

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日中のミスマッチが「歯がゆい」

   「介護保険」という名称は同じでも、日中ではカバーする範囲ひとつとっても違う。巨大な人口の中国で、日本並みのきめ細かなサービスを施せば、すぐに破たんしてしまうのは明らかだ。

   日本側にはともすれば、自分たちの経験やノウハウを「これしかない」と捉え、「中国はこれをこのまま学べばよい」という態度が見受けられます。ただ、それが中国の実情に合わなければ、参考にはならず、心には届きません。「このミスマッチやギャップが、中国と日本を結びつけようとしている私にとっては、いま何とも歯がゆい点です」。王青さんは、そう話す。

上海の施設で。麻雀はどこの施設でも人気だ。(王青さん提供)
上海の施設で。麻雀はどこの施設でも人気だ。(王青さん提供)

   中国の高齢化や介護ニーズの急拡大という事態は、「日本側にとっても、自分たちが築きあげてきたケアの技術、理念を、再確認する好機ではないでしょうか」と、王青さんは指摘する。

   たとえば、「『人間の尊厳』を重視するケアは、日本が誇ることができ、中国に伝えるべきものだと思います」、とも。

「いま中国では認知症への関心がものすごく盛りあがっていますから、まさに格好のタイミングです。2017年に、私たちは上海で認知症ケアに関するフォーラムを開きましたが、当時はまだ『痴ほう症』という呼び名が主流でした。このフォーラムの報道もきっかけとなって、認知症という呼び名が一気に定着したのがこの1~2年のことなのです」

   介護施設の競争も激しくなる中で、「認知症への適切なケア」を施設の強みとしてアピールする動きも活発になっている。日本のグループホームに似た認知症専門のケア施設が、これからどんどん建てられるのだろう。

   これまで認知症患者は病院に入院するか、自宅にいるかという二者択一だったのが、いままさに現在進行形で、しかも急スピードで変わりつつある。

「認知症ケアと並んで、私が日本の強みだと考えているのはリハビリ分野です。中国でも各施設で理学療法士たちが働いていますが、まだまだ医療的な訓練が中心。高齢者施設など生活の場で、レクリエーションも交えて楽しみながら、『自立支援』に向けたリハビリを進める日本独特の姿は、必ず中国の参考になるはずです」

   さらに中国はいま、日本だけでなく世界各地の介護の先行事例を猛烈に研究している。日本式の介護手法はどうも中国に合わない、たとえばオーストラリアのやり方を基に中国式のケアを考えようという動きだって生まれないとは言えない。

   王青さんは、「こんなに誇るべき介護の技やシステム、理念がある日本。しかもいまは日本への期待感は中国側には強い。介護関係の方々には、ぜひ中国のニーズや国情をリアルに知っていただければと思います」と話す。


プロフィール

王青(おう せい)
上海市出身。1989年来日、大阪市立大学経済学部卒業。1995年から大阪市で高齢者福祉の業務に関わり、2002年、福祉ビジネス分野で日中交流を進める「wq biz planning」設立。04年「日中福祉プランニング」に改称。日本企業の介護福祉や葬祭分野などでの対中進出支援で多くの案件を手がける。ネットや専門紙に多数寄稿。

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