高齢化社会の中国で急拡大する介護ニーズ 日本は「強み」を再確認すべし!

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   人口超大国の中国は急速に高齢化が進んでおり、介護のニーズや関連市場もまた急速に膨らんでいる。

   現状(2019年)、中国の人口約14億人のうち、65歳以上が約2億人、要介護状態の人が4300万人という。10%台の高齢化率はこの先も右肩上がりで上昇し、大きな介護ニーズが発生することは確実。中央政府は2016年、介護保険を試験的に導入して上海、青島など15都市を先行地域に定めて対応を急いでいる。

   高齢化や介護先進国である日本の事業者、企業との提携を望む声も高まっているが、現場では、日中間の考え方のミスマッチも少なくない。巨大な中国の介護市場にうまく参入するには何が必要か――。介護分野の日中交流を16年間続け、中国の事情に詳しい日中福祉プランニング(東京・世田谷)の王青代表に聞いた。

  • 上海の高齢者施設でのリクリエーションの様子(王青さん提供)
    上海の高齢者施設でのリクリエーションの様子(王青さん提供)
  • 上海の高齢者施設でのリクリエーションの様子(王青さん提供)

上海で根付き始めた介護保険

   2019年8月、王青さんは中国でも高齢化が最も進んでいる上海を訪れ、在宅介護の現場やケア施設を視察した。「介護保険は確実に根付いている印象でしたね。保険の仕組みは実施都市によって少しずつ異なります。上海の場合、原資は公的医療保険料の一部で賄われ、税金は投入されていません。対象サービスは、在宅介護のヘルパーと施設での介護費のみ。要介護度は5段階で、日本の『要支援』(日常生活を営むのに支障があると見込まれる、要介護前の2段階)はありません。段階は上海が独自に作った認定システムで決められます」と、説明する。

   上海では、在宅介護は1日に1時間だけ利用できる。利用日数は利用者の状態に応じて違い、毎日ヘルパーに来てもらう人もいる(自己負担は1割)。河南省など内陸部から出稼ぎで来ている中年女性が大半のヘルパーさんは、組まれた日程に従って効率よく利用者宅を回る。1日10軒以上回って、日本円で20万円以上の月収を手にする人もいるそうだ。

   介護保険の実施前は、事業者側は国から最低限の補助金だけを受け取っていた。運営収支はトントンか、場合によっては赤字に陥っていたのに、実施後は事業の収支構造が安定するようになり、「利用者の満足や家族の負担軽減効果ははっきり上がっていました」と、王青さんは言う。

   とはいえ、中国の介護サービスはまだまだ手探りに近い状態。事業資金を出すのは金融やITなど異業種から参入した企業が目立ち、彼らからは、豊富な先行事例を持つ日本に「学びたい」「運営を委ねたい」という声が多くあがっている。

   たとえば、日本で介護の柱となっているケアプランをどう作成し、どう実行し、どう評価するか。プランの中心となるケアマネジャーはどう育成すればよいか......。

「こうした面で、日本側が自分たちのノウハウを、中国側が受け取りやすいように伝えてあげることができれば、『介護の輸出』が本格化し、大きなビジネスチャンスも見込まれると感じました」と話すが、一方で注文も。「その際、最も留意せねばならないのは『日中の違い』です」。
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