ウーバーの「働き方改革」 研究者が語る「アルゴリズム管理の光と影」

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「自由」「自身が上司」も現実は......

   こうして急成長の波に乗ったウーバー。ドライバーには「自由」や独立性を約束し「自分自身が上司」のセールストークで誘う。じつはウーバーは法的な狙いから、ドライバーを「個人事業主」に分類し、従業員の資格を与えていない。つまり、その資格があれば受けられる雇用や労働をめぐる法的保護から除外しているという。その一方で、仕事中のドライバーの行動について「かなりの規制」を課しており、独立とか「自分自身が上司」などという状態とはいえない。

   しかも、その規制を課しているのは人間の監督者ではない。ウーバーではアルゴリズムでできたシステム上にライドヘイルのプラットフォームを構築。これがバーチャル上司の役割を果たしているという。ドライバーが個人事業主であり、あるいは自身が上司なら、自分でスケジュールを決め、自由に乗客を選べ、賃金レートを作成し、顧客リストを作成することが仕事だ。

   著者によると、ドライバーはフレックス制などから恩恵を受けてはいるが、ウーバーは「プロモーション」という追加報酬を設定することで、これが欲しいドライバーについては実質的シフト制に組み込むことがあるという。また、ドライバーが自分だけの顧客リストを作ろうとするとそのアカウントが停止となる可能性がある。

   「ドライバーは、名目上は自由で独立した立場とはされているものの、こうしたアルゴリズムの上司によって施行されているウーバーのルールは、ドライバーたちに開かれているはずの起業家精神にあふれた意思決定の機会を、とてつもなく制限しまっているのだ」と著者。ドライバーは、会社側の「自由」公約と、それを骨抜きにするアルゴリズム的マネジメントの現実との間には歴然とした差があり、ドライバーについてのウーバーの分類を巡る訴訟でも、原告の主張の根拠になった。

   ウーバーにとって「従来のカテゴリーを再定義することこそ、会社自体の成長を追求する賢い方法だった」と著者。本書では「ウーバーがいかに我田引水となる議論を利用して」成長してきたかについても明らかにされている。

「Uberland ウーバーランド ―アルゴリズムはいかに働き方を変えているか」
アレックス・ローゼンブラット著
青土社
税別2600円

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