「Uber(ウーバー)」の名前は、日本では3年前に東京に上陸し、拡大している飲食の宅配代行サービス「ウーバーイーツ」で一層知られるようになった。
本書「Uberland ウーバーランド アルゴリズムはいかに働き方を変えているか」は、「ウーバー」研究の第一人者による。「ウーバー」が試している「新しい働き方」を論じたものだが、光と影のコントラストがときに強まることがあるらしい。
「Uberland ウーバーランド アルゴリズムはいかに働き方を変えているか」(アレックス・ローゼンブラット著、飯嶋貴子訳) 青土社
ウーバーはテクノロジー会社か、タクシー会社か
米ウーバー・テクノロジーズは、日本では「配車サービス大手」とか「配車アプリ世界最大手」などといわれるが、メーンの事業はスマートフォンのアプリを使って行う自動車輸送の利用者とサービスを提供したいドライバーとの「マッチング」だ。ウーバーイーツは、その派生ビジネス。同社自身による分類は「テクノロジー会社」だ。ところが米国では、連邦地裁で判事が、無線を使ってタクシーを配車するニューヨークのイエローキャブとどこが違うのかと述べ、タクシー会社と断じる一幕もあった。
ウーバーでは、ドライバーが自身の自家用車でサービスをする。そればかりか、同社のアプリは利用者とのマッチング機能ばかりではなく、ドライバーの管理にまで及ぶ。だから、タクシー会社と同じという指摘もあるわけだが、自らを「テクノロジー会社」と分類するのは、タクシー会社であることで課される「枠」を避けているのかもしれない。
本書は、2010年にウーバーがスマホアプリの最初のベータ版を発売した当時にまでさかのぼり、同社の成長ぶりを追っている。
ベータ版を発売したころといえば、その2年ほどまえにリーマン・ショックが世界を襲い、その余波で失業者が急激に増えていた。こうした不景気を背景に当時、社会的に盛り上がったのシェアリング・エコノミー。カーシェアリングや、レンタル産業、共同住宅などがもてはやされ、ウーバーは米国でたちまちのうちに「シェアリング・エコノミーの広告塔」になったという。こうした経緯から、ウーバーになじみが薄い日本では、ウーバーがカーシェア、あるいはライドシェアのアプリとされることがあるが、より正しくは「ライドヘイリング(配車サービス)のプラットフォーム」だという。
ドライバー希望者は、車が1台あって、簡単な身元調査でアプリの配布を受け仕事ができる。もちろん運転免許証番号や自動車の保険証券番号の登録が必要だが、ウーバーは、失業者らに低いハードルで雇用機会を提供する企業として注目された。スマホやパソコンを使ってインターネットを通じて単発の仕事(ギグワーク)の代表例とされ、このあと米国では、ギグワークが経済のなかで認められるようになり、15年ごろから「ギグエコノミー」という用語が使われるようになった。