「加害者」の職業
では、どのような職業の人間が「加害者」と呼ばれやすいのでしょうか――。代表的なものには、政府、医療、そして2011年以降のエネルギー産業界があるでしょう。
これらの業界の共通点は、社会への有益性の代償として、何らかのリスクを他者に負わせる、という点だと思います。
たとえば多くの政策は、一部の国民に生活リスクを負わせる可能性があります。生活保護の支給条件を決めれば、その条件から少しだけ外れた方が一番の弱者になる、などがそれに当たります。医療は治療という行為の代わりに副作用や有害事象のリスクを患者に負わせます。言い換えれば、
「弱者にリスクを負わせてのうのうとしている」
という構図を作りやすい職業、とも言えるでしょう。本当の現状を知る人々は反論もあるでしょう。しかし一たん、この単純な構図が作られてしまえば、それに対し反論することは困難だ、ということもご存知だと思います。
エネルギー業界についても同様のことが言えます。たとえば発電は、その大きな有益性の代償として、発電所による環境破壊や発電所事故のリスクを立地地域の住民に負わせている、とみなされるからです。
重要なことは、加害者性が批判を受ける場面では、その技術の有益性は考慮されない、ということです。つまりエネルギーがどれだけ有益であっても、エネルギーそのものにリスクが内在する以上、その加害者性という側面はなくならないのです。