よい製品を提供しているだけではお客に選んでもらえない
市場で買い手が少なくなるという規模の縮小がある一方、このところのグローバル化で通信事情や輸送力が向上。それにより商品・サービスのサプライヤーが増えたことも、市場の環境をタイトにしている。
たとえば、世界市場で製品のでき栄えに定評があった日本の家電メーカーだが、村上さんによると「急速に存在感をなくした」という。
「結局、新興国の台頭などで製品のコモディティ化が進むという周りの変化の方が早かった」。かつて高付加価値を誇った日本メーカーの製品だが、他国の安価な製品が市場に入り、日本製品の市場価値は低下して一般的な商品になってしまった。テレビでは中国や韓国のメーカーが、エアコンではまたインドのメーカーが世界市場でシェアを伸ばしている。
「よい製品を作ることが大事であることは言うまでもない。私も強くそう思う。ただ、今は世の中の移り変わりが早くなってしまい、よい製品を提供しているだけでは、なかなかお客に選んでもらえなくなっている」
グローバル化や、少子高齢化など現代特有の現象で、市場は早い速度で変化を続ける。その環境のなかで、「ロイヤリティ・マーケティング」は企業にとって有効なサバイバル戦略の一つだ。「顧客維持率が5%上がれば利益が2倍になる」あるいは「既存個客の購入額は新規顧客のそれより平均で67%高い」というデータもある。
「こうして得られた利益の一部を原資にロイヤリティ・マーケティングを展開するのは、合理性に適っている」
「なぜあの店でもう一度買いたいのか」
村上勝利著
日経BP
税別1600円