「幼保無償化」スタート 働く女性に意外に批判が多いのはなぜ? 専門家に聞いた

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   2019年10月1日から消費税アップと同時に、その使い先として3歳から5歳までの幼稚園、保育所、認定こども園などの利用料が無償化となった(0~2歳は、住民税非課税世帯の子どもが対象)。

   ところが、この幼保無償化、働く女性たちはどう思っているのかを尋ねると、「賛成」が46%と約半数近く占めながら、「反対」も23%と、2割以上が批判的であることがわかった。いったいどういうわけだろうか――。

  • 10月から保育園がタダになった
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40代女性は「幼保より高校・大学を手厚くして」

   調査をまとめたのは、主婦に特化した人材サービス「しゅふJOB」の調査機関「しゅふJOB総研」。2019年9月27日に発表した。「しゅふJOB」に登録している人など995人の働く女性にインターネットを通じてアンケートをした。

   幼児教育・保育の無償化について「知っていた」と答えた人は86.5%に達し、大半の人が関心を示した。子育て環境への影響を聞くと(複数回答)、「幼児期の子どものいる家庭の生活費が助かる」が55.8%と一番多く、次いで「幼児期より高校・大学など高等教育の子育て支援を手厚くすべき」(38.9%)と批判的な声が続く。

   幼保無償化に賛成かどうかを聞くと、「賛成」が45.6%、「反対」が22.8%、「わからない」が31.6%となった。子どもがいる・いない別に比較すると、子どもがいる人の賛成が46.6%、反対が22.2%、子どもがいない人の賛成は40.6%、反対が26.3%と、子どもがいる人の方が賛成する割合が高かった。

   また、世代別に賛否を聞くと、30代以下では賛成が61.5%(反対13.4%)と賛成する割合が非常に高いが、40代では賛成が40.6%(反対24.3%)、50代では賛成が44.0%(反対25.7%)と、40代では賛成する割合が一番低くなった。

   これはなぜだろうか。前述した子育て環境への影響に関する意見でも、「幼児期の子どものいる家庭の生活費が助かる」と答えた人は、30代以下では72.7%と圧倒的に多かったが、40代では50.3%だけだった。逆に「幼児期より高校・大学など高等教育の子育て支援を手厚くすべき」と答えた人は、30代以下では33.7%しかいなかったが、40代では45.9%と突出して多かった。

   40代では年代的に子どもが幼児よりも大きく育っている世帯が多いと想定され、その結果、幼保無償化の対象になる人が少なく、その上の年代の高等教育の費用が切実になっているからとみられる。

「待機児童や保育士待遇アップにお金を使って」

   実際に、フリーコメント(年代:子どもいる・いない)で賛否の意見を聞くとこんな声が目立った。

   まず賛成の声から――。

「少しでも子育ての負担が減らないと、子供を生み育てたいと思わない」(50代:いる)
「無償化は、幼い時期を国が育てるという意志表明のひとつになる」(40代:いる)
「出生率を上げろと言うなら、これだけでは不十分だが、何もやらないよりはマシ」(50代:いない)
「待機児童がなければ大歓迎。働く人が増える」(40代:いる)
「すべて教育に関するものは無償にするべきと考えている」(50代:いる)

   一方、反対の意見はこうだ――。

「財政難という理由で消費税を上げたのに 無償化にしたら意味がない」(50代:いない)
「大学などの高等教育に比べ、幼児期は小さな金額。金銭問題で高等教育を断念せざるを得ない人材を救うべき」(50代:いる)
「幼児期には元々いろいろな補助金があり、そんなに負担だと思っている人は少ない」(50代:いる)
「援助が必要な家庭のみ支援を手厚くすればよい。高収入家庭は無償にするべきではない」(40代:いる)
「無償化よりも、保育士の給与や待遇改善、待機児童解消にお金を使った方がいい」(30代:いる)

「決して万能策ではない。より良い制度に修正を」

   今回の調査結果について、「しゅふJOB総研」所長の川上敬太郎さんはこう分析している。

「幼保無償化は、働く女性にどう受け止められているのか。最も多かったのは『幼児期の子どもがいる家庭の生活費が助かる』との回答でした。しかしながら、次に多かったのは『幼児期よりも高校・大学などの子育て支援を手厚くすべき』という批判です。幼保無償化を歓迎する声が多いものの、さらにお金がかかる高等教育への支援を求める声が、40代を中心に厳然と存在しています。高等教育にかかる費用をリアルに感じられる層なのです」

「50代以上になると、幼保無償化の賛成比率が40代より若干上昇します。子育てがひと段落して、孫の保育が身近に感じられる人もいるのでしょう。幼保無償化は総じて賛成の声の方が多いですが、決して万能策とは言えません。『待機児童解消を優先すべき』『保育士の待遇を上げるべき』など多くの課題がフリーコメントでも指摘されました。公平性や効果を検証しながら、より良い制度へと修正していくことも視野に入れる必要あると考えます」

(福田和郎)

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