次世代の移動通信システムの「5G」、第5世代移動通信システムは、米国などではすでにサービスが始まっており、日本でも2020年春から使えるようになる予定だ。
超高速、大容量、多接続が特長だが、AI(人工知能)やVR(仮想現実)、AR(拡張現実)などのテクノロジーをさらに進化させ、新たな産業革命への期待が高まっているという。
その新時代の開拓を牽引しているのは、中国の通信機器メーカー、ファーウェイ・テクノロジーズ(華為技術)なのだが、米トランプ政権がその前に立ちふさがった。
「ファーウェイと米中5G戦争」(近藤大介著)講談社
「米中冷戦」トランプ大統領の「宣戦布告」
本書「ファーウェイと米中5G戦争」は、5Gを足掛かりに、世界の先頭に出ようとする中国に対して、通信分野を含めて世界の覇権を握ってきた米国が「それはまかりならぬ」と待ったをかけて始まった「戦争」について詳しくルポした。
著者の近藤大介さんは、中国についての著作が多いジャーナリスト。外国人記者としては初めてとみられる、中国・深センのファーウェイ本社内にある研究開発本部の詳細取材を敢行。本社敷地内には、社員寮のタワーマンション群、出張社員用の豪華なホテルが備えられ、その「帝国」ぶりのスケッチ描写も圧巻だ。
いわゆる、米中貿易戦争が顕在化したのは2018年。お互いに追加関税を実施し始め、それが19年になってからも続く。そして、ついに5月、トランプ米大統領は「米中冷戦」の「宣戦布告」ともいえる行動に出た。
それが「情報と通信技術とサービスのサプライチェーンの保護」と題する大統領令への署名。国家安全保障を理由に、ファーウェイの製品を米通信ネットワークから事実上排除するもので、さらに同じ日の米商務省の発表で、ファーウェイとその関連会社を、政府のエンティティリスト(禁輸措置対象リスト)に追加したことを明らかにした。
米国側は貿易戦争での、そもそものターゲットがファーウェイの排除であり、その機が熟すのを待っていたという。