「勝ちたい」というメンタリティと自信はあるか!
銀行員時代に、苦境にあえぐ企業経営者を多々見てまいりました。同じように苦境に陥っても、「経営の死の淵」から生還した企業と、復活を遂げることなく息絶えた企業の違いは、まさに経営者の下での社員たちの「復活に賭けるメンタリティと、復活に向けた自信」の違いではなかったかと、ラグビー日本代表の下馬評を覆す大活躍に思い出されました。
チェーンのディスカウント・リカーショップ経営のA社。酒販免許の自由化の波に押されて減収、減益が続き、それまで酒と一部おつまみや日配品を併売するなどしてきた店舗を、大手チェーンからノウハウを受ける契約を結んで、食品スーパーに衣替えして起死回生をはかるという策に出ました。
当然、銀行も社長の決死の覚悟を受けて資金協力を決め、社長と改革をいかに進めるか入念な打ち合わせをしました。
その時の社長の考えで、引っかかったことがありました。
「今の経営苦境は、オーナー家の経営判断が業界の変革に対して後手後手に回った結果であり、業態転換に際して社員に責任をなすりつけるようなプレッシャーはかけたくない」
そう言ったのです。
つまり来店客の減少は、現場も肌で感じていたのですが、スーパーへの転換が経営危機脱出の決死の策という伝え方はせずに、前向きな業容拡大的なイメージで新たな事業展開だと、社員に説明したのです。
結果は危機的状況にありながら、自然体の現場社員は受身のまま「勝ちたいというメンタリティ」も「勝てるという自信」も生まれるべくもなく、業態転換からわずか1年で倒産の憂き目にあったのでした。