仕事は振って振られての繰り返し
つまり、仕事は「振られてなんぼ」なのです。自分が振った仕事が戻ってくる、あるいは互いに振り合うこともあります。また、隣同士でシェアするケースも見られます。たとえば、同じ職場の中で、専門家同士が二人で一つの仕事を分け合ってやる。あるいは、「手が足りないからここだけ手伝って」という場合もあります。
先ほどの部長と社長の例を見るまでもなく、働いている人は誰もが、あるときは振る立場に、あるときは振られる立場になるのです。会社組織では、たいていの仕事は何人かでチームを組んで行なう「プロジェクト」であり、振る立場の人間は「プロジェクトリーダー」となります。プロジェクトリーダーは上司とは限りません。
その仕事の責任者であり、自分で仕事を分解して各人に分け与えていく立場です。大きな仕事に複数の人間で取り組む場合は、このプロジェクトリーダーという役割が必要不可欠となります。
一方で、このリーダーが今度は別のプロジェクトのメンバーになり、そのリーダーから仕事を振られることもあります。つまり仕事というのは、振る人と振られる人が明確に分けられているわけではなく、同じ人間が振ったり振られたりしながら成り立っているのです。
上司から振られた仕事の一部を、部下に振る、ある仕事のかたまりを分解して人に渡したり、自分でやったりする......。それを繰り返すことが、組織の中では常に行なわれているのです。会社にいれば振る立場と振られる立場が常に存在し、振るだけ、振られるだけの人はいません。「振って、振られて」を繰り返していく中で、「振り上手」や「振られ上手」になっていく。こうして一人の人間がさまざまな仕事を体験することが、個人としても、また組織としても理想的だと言えます。(高城幸司)