「カスハラ」という言葉をご存じだろうか――。「カスタマー(顧客)ハラスメント」の略称で、暴言や土下座の強要など、お客からの悪質クレームや迷惑行為をいう。サービス業で働く人は7割以上が、「カスハラ」の被害を受けているという調査もある。
そんななか、サービス業の労働組合などが加盟するUAゼンセンは、悪質クレームの啓発動画「悪質クレーム対策『僕にも家族がいて、人生があります。』by UAゼンセン」を2019年9月26日、YouTubeで公開した。
「安くしろって言ってんだ」「土下座だ、土下座しろ!」
公開された動画は、今年6月に公開して大評判になった啓発動画「悪質クレーム対策★『悪質クレームを、許さない』by UAゼンセン」に続く、第2弾。
動画は30秒ほど。スーパーの店内に「申し訳ございません」と、平謝りをする男性従業員の声が響き渡る。中年の女性客が深々と頭を下げる男性を怒鳴りつけている。
「申し訳ないはいいから。じゃあ、ほかで買ってきて!」
店長が慌てて飛んでくる。
「お客様、どうされました?」
女性客が店長に抗議する。
「在庫があるっていうから来たら、ないというのよ。ほかから買ってきなさいよ!」
疲れる一日を終えて、男性は「今日みたいなことは初めてではない」とモヤっとした気分のまま帰路につく。脳裏に浮かぶのは、迷惑客の暴言と怒りの形相の数々だ。
「安くしてって、言ってるじゃないの!」
「いいから土下座をしろよ、土下座だ!」
.........。
娘の「パパ、お仕事楽しい?」に答えられない従業員
そこへ、「パパ~!」と後ろから声が聞こえた。小さな娘と妻がニコニコ笑いながら近づいてくる。
娘「パパ、お仕事楽しかった?」
男性「う~ん、忘れちゃった」
娘「ええ~、忘れちゃったの?」
男性「ハハハハ」
親子3人で手をつないで歩く姿に、キャッチコピーがかぶさる。
「僕にも家族がいて、人生があります。」
J-CASTニュース会社ウォッチ編集部の取材に、UAゼンセン企画・情報局の広報担当・鈴木伸司さんはこう説明した。
「サービスを提供する側と受ける側がともに尊重される社会をつくりたいと願い、映像を作りました。そんな社会をつくるためには、お互いを思いやる気持ちが大切になります。映像には、消費者からのクレームを受ける従業員が映し出されます。クレームは、消費者にとって正当な権利であり、サービスを向上させるために必要な資源ですが、心無いクレームは、一人の人間を傷つけることがあります。その従業員にも大切な人がいて、大切な人生を歩んでいることも考えてほしいと願って作りました」
すでに、セクハラやパワハラは法制化が進んでいるが、「カスハラ」については、現在、厚生労働省の労働政策審議会でハラスメント防止に向けた具体的な指針の策定のための論議が行われている。
鈴木さんは、
「サービスを提供する側、受ける側がともに尊重される社会をつくるために動画が活用されることを期待しています」
と語った。
福田和郎