「デジタルへ どうぞ」は「敗北宣言」だ!
僕も長年、新聞社で記者をしていたから、以上二つの理由は理解できなくもない。でも、僕が記者になった半世紀ほど前は、休刊日は正月とゴールデンウィークの2回だけだった。しかも、最近は夕刊がだんだんなくなってきたが、当時は日曜日も祝日も夕刊があった。配達は今よりも大変だった。
いま休刊日を知らせる社告には、最新ニュースは(新聞の代わりに)「朝日新聞デジタルでご覧ください」「毎日新聞ニュースサイトで......」「読売新聞オンラインで......」と書いてある。これを読むたびに、僕は情けなくなる。「デジタルがあれば、新聞なんてなくても大丈夫です」と言っているみたいである。「敗北宣言」のようにも聞こえる。
休刊日で新聞の製作は休んでいても、記者たちは取材をしている。それなのに、結果を伝える媒体はデジタルだけになってしまう。僕もデジタルでニュースを見ているが、新聞に慣れた身にとっては、なんとなく物足りない。
デジタルは確かに重要である。これからの主流だろう。しかし、新聞社には、いたずらに休刊日を増やすのではなく、歯を食いしばってでも、可能な限り「紙」の新聞を届けるという「矜持(きょうじ)」を示してもらいたい。元記者の身びいきかもしれないけれど、新聞を読まない人が増えているだけに、余計にそう思うのである。(岩城元)