ひと口にトレードや投資といっても、その戦略や手法はさまざまであり、一概に「これをすれば儲かる」といったことは断言できないと思われる。
ただ、よく言われるのは、相場では自制心が求められるということだ。そこで、トレードする中で湧き上がってくる感情がトレードに影響しないよう、あらかじめ決めたルールにしたがって一連の取引を進める手法を、「システムトレード(シストレ)」と呼ぶ。
では、具体的にどのようなシステムトレード戦略が、長期間にわたって利益を上げることができるのだろうか――。そんなことを考え、市販のシステムトレード戦略を購入して検証している評価機関が、米国には存在するようだ。
シストレにまつわる疑問や迷信を検証した一冊
「究極のトレーディングガイド」(パンローリング刊)は、自動売買システムを評価している米国の第三者機関の幹部らが2000年代前半に発行した書籍で、その巻末で彼らが市販のシステムでもっとも優れていると判断する「10のシステム」を紹介している。
彼らは以下の基準に基づき、市販の売買システムのベスト10を発表した。
(1)リアルタイムのトレード成績の検証期間
(2)運用成績が安定していること(ある年のリターンは400%だが、翌年はマイナス10%といったシステムは失格)
(3)純利益に対する最大ドローダウンの比率(安定して資産が増えていること)
(4)詳細な価格データやコンピュータ(プログラミング)が必要かどうか
(5)オープン・システムか、ブラックボックス・システムか
なお、本書に参考として記載されたテスト結果は、1980年代から90年代にかけて検証した結果である。
詳しく知りたい人は本書を読んでほしい。
ちなみに、ここで紹介されているストラテジーは1980~90年代に公開されたもので、現在は無料でプログラミングのコードが公開されているものもある。
さて、多くの人が気になるであろう、システム売買にまつわる疑問や迷信についての本書の著者の答えの一部を、ここにまとめておきたい。
「9500円」のシストレでも儲けることができる
システム売買に関して多くの人が口にすることの一つに「本当に勝てるシステムは数百ドル(数万円)では手に入らない」というものがある、と本書の著者は説明している。
これについて、著者は全面的に否定しているどころか、次のようにさえ述べている。
「我々は、たったの100ドル(約1万円)以下で販売されていたシステムが、1万ドルで販売されていたシステムを超える運用成績を上げるような例をいくつも見てきた。我々の見解としては、3000ドル以上で販売されているシステムを購入することは推奨していない」
実際、本書の著者がトップ10に選んだシステムで、もっとも高額だったのは2500ドル(約25万円)で、もっとも安価だったのはわずか95ドル(約9500円)だった。
システムの販売額と実際の運用成績は、無関係。つまり、高額なシステムが安価なシステムよりも優秀かといえば、そうでもないということである。
10の優れたシステムのうち、8つは中長期売買のシステムだった。また、9つのシステムは順張り戦略だった。逆張り戦略のシステムは、わずか1つだけだった。
また、6つのシステムがさまざまな金融商品をトレードしていた。なお、トレード対象はユーロ、円、10年もの米国債、原油、砂糖、大豆、銅、オレンジジュースなど、多岐に渡った。
一方、残りの4つのシステムは、特定の金融商品を対象としたものだった。そのうちの3つは、米国の代表的な株価指数であるS&P 500指数先物をトレードしていた。
とにかく、シストレのあれこれを検証し、その「傾向」を示しているのだ。
なお、本書の著者らが幹部を務める調査会社のフューチャーズ?トゥルース社は、2019年現在も実在している。現在、この会社が四半期ごとに発行しているリアルタイムの検証記録の掲載された雑誌(英語版)を購入することは可能だ。(ブラックスワン)