出版不況に歯止めがかからない状況が続いている。
2018年度の出版社の売上高の合計は1兆6036億4700万円で、前年度比0.2%減。2年連続の減少となった。出版取次業は1兆5195億3200万円で同4.3%減、書店経営は1兆652億6000万円で同1.3%減だった。3業種とも、前年度と比べて減った。ただ、全体の売り上げの減少幅は縮小している。2019年9月26日、帝国データバンクの発表。
出版取次業の減少率、10年前から20%超す
2018 年度の国内の出版関連業者の売上高合計は、出版社、出版取次業、書店経営のすべての業種で減少していることがわかった。総売上高動向で、2008年度及び2013年度から18年度までの売上高が判明した出版関連業者3740社を調査した。
このうち、出版社は2年連続、出版取次業は5年連続、書店経営は3年連続で減収。出版業界全体として10年前の2008年度と比べてみると、減少率は2ケタを超え、出版取次業では20%を超えた。出版取次業者の厳しい業況がうかがえる。
ただ、いずれも減収幅は縮小傾向にある。
売上規模別にみると、全体では「1億円未満」が2438社(構成比51.6%)でもっとも多い。次いで「1億~10億円未満」で1794社(同38.0%)。3業種ともに小規模事業者の割合が多く、なかでも書店経営は「1億円未満」の構成比が最も高く全体の57.4%を占めている。
また都道府県別でみると、全業種で「東京都」がトップ。「大阪府」や「北海道」「愛知県」が続き、主要都市を有する都道府県に多いという分布となった。東京都は、2位の大阪府の8倍以上と、ひと際目立つ。
書店大手の文教堂も事業再生へ
全国出版協会の発表によると、2018年の「紙」の出版物の販売金額(推定)は、1兆2921億円で、前年比5.7%減と14年連続のマイナスとなっている。なかでも雑誌は前年度比9.4%減の5930億円で、21年連続の前年割れと厳しい状況が続いている。
帝国データバンクの調べでは、書店経営の状況は、北海道で2019年5月以降、「喜久屋書店 BOOK JAM」(BOOK JAMK&S、千歳市)や、なにわ書房(札幌市)など著名な書店の倒産のほかに、中小規模の書店の廃業や閉鎖が相次いでいる。6月28日には、書店大手の文教堂グループホールディングス(神奈川県川崎市)と100%子会社の文教堂が私的整理である事業再生ADR(裁判外紛争解決手続き)を申請した。
また、日本出版取次協会は3月、人手不足などの物流面の影響で中国・九州地方での雑誌や書籍の販売が発売日より1日遅れると発表している。
厳しい経営状況が続く一方で、出版取次の大手、日本出版販売のブックディレクションブランド「YOURS BOOK STORE」が18年12月11日に、青山ブックセンター六本木店の跡地に、入場料を取る書店「文喫」をオープンするなどの、新しい試みがはじまっている。
なお調査は、帝国データバンクの企業概要ファイル「COSMOS2」(約147万社収録)から、2019年9月時点での出版社、出版取次業、書店経営を主業とする4734社を抽出し「出版関連業者」と定義。売上高の合計や企業実態などを分析した。