心が揺らげば、勝つことは難しくなる
ジョン・ボイド大佐は、OODAループに関する知見をまとめることなく、講演用のスライドや短い論文などを残したのみでこの世を去りました。いまは亡き、ボイドの理論を体系化してわかりやすくしたものが本書になります。 入江さんは、
「私自身、長年OODAループを研究し、組織にOODAループを埋め込む支援をするなかで、活気がなく、停滞感や閉塞感が漂う組織をいくつも見てきました。経営陣から現場まで、一人ひとりの思考法が変わらない限り、日本の組織は速くも強くもなれないし、成長もできないことは明らかでした」
「スピードと柔軟性が最優先される時代にはそれに合った思法が必要ですが、今の日本人にはそれがありません。だから私はOODAループを使いこなせる人を1人でも増やすために、この本を書くことにしました」
と言います。
本書の要点を、ひと言で説明するなら「相手のメンタルを破壊すること」です。戦闘の場面で、相手のメンタルを破壊できれば戦闘意欲をなくします。とてもかなわないと白旗を上げさせれば戦闘は終結です。無用な血が流れることも、消耗戦に陥ることもありません。
剣豪の宮本武蔵は、メンタルをターゲットとして破壊することを「うろめかす」と表現しています。心が揺らげば、武力の達人でも勝つことは難しくなります。
科学的知見を取り入れていたボイド大佐ですが、なかでも座右の書としてOODAループの思想的背骨に位置づけていたのが、宮本武蔵の「五輪書」でした。相手のメンタルを破壊して勝利するOODAループ。注目してみたい思考法のひとつです。(尾藤克之)