カリスマでワンマン経営ゆえの重罪
M&Aでは、大手企業のサラリーマン社長でももちろん、相手の規模やトップの性格などを考慮し、単に戦略的な観点だけでなく企業風土や文化といった観点で総合的に検討し、特にそれは社員の立場で考えてということも含め、統合あるいは傘下に入ることが正しいのか否かの判断を下しているのです。
例外はあります。救済先を求めているような危機状況の場合は、企業文化面での相性を考えるなどの余裕はなく、とりあえず救ってもらえることが社員にとっても最善の策であるとの考えで動きます。
しかし、今回はそれには当たりません。むしろ相手の傘下に入るというケースでるがゆえ、企業文化の相性によほどの慎重さが求められることは経営の常識であると、私は思います。
前澤氏の判断はそういった企業文化、従業員目線といった観点からは、あまりに安易な選択であったと言っていいでしょう。もちろん、今のベンチャー企業にそんな古臭い常識は通用しないと言われる向きもあるのかもしれません。しかしながら私個人は、カリスマでワンマン経営であるならあるだけ、それに従わせている社員に対する責任は重たいのだと、常々規模を問わずワンマン経営の経営者には言い続けてもいます。
時代は変われど「組織は人なり」は不変であり、多くの経営者をこの目で見てきた立場からは、「人」を軽く扱う経営者は必ず報いを受けると確信しているからです。
今回のYahoo!傘下入りで、早晩前澤氏を慕ってきたZOZOTOWNの多くの社員は、辞めることになるでしょう。企業規模を問わず世の経営者の方々には、前澤氏のような社員を顧みない自己利益中心の経営者にはなってほしくない、と切に思うところであります。(大関暁夫)