「バスキアの絵画を123億円で購入」「月周回旅行を契約」「総額1億円のお年玉をプレゼント」――。ここ2~3年、何かと話題を集めているECサイト運営の風雲児、前澤友作氏率いるアパレル通販サイト「ZOZOTOWN」が、孫正義氏が率いるソフトバンク・グループのYahoo!傘下に入ることが報じられ、世間を騒がせています。
前澤氏は、所有株式の大半を売却。同時に社長の座を降りて、ZOZOTOWNの経営から完全に撤退することとなりました。
ZOZO株、市場よりも高値で売り抜こうとは......
ZOZOTOWNは、前澤氏が2004年に立ち上げた衣料品通販サイトの「ハシリ」で、東京の最先端ファッションが全国どこででも手軽に手に入るというコンセプトが受けて急成長します。
しかし、後発競合サイトの乱立に加えてZOZOスーツをめぐる不評などにより、プライベートブランドの立ち上げに失敗。起死回生策として昨年(2018年)から始めた会員向け割引サービスが、ブランド毀損の恐れがあると有名出店企業が相次ぎ撤退したことで「ZOZO離れ」を招き、近況は株価もピーク時の半値を割り込むという「負の連鎖」に歯止めがかからない状況にありました。
今回の企業譲渡は、このような状況を受けて前澤氏サイドから孫氏に「相談」が持ちかけられたと言います。Yahoo!は、Amazon、楽天に遅れをとっている自社ショッピングサイトのテコ入れを模索中という思惑と合致し、話はトントン拍子に進んだのだといいます。
世間的には、冒頭に記したような金持ち風を吹かせていた前澤氏に対する妬みもあってか、企業売却という氏の判断と行動を、経営者として無責任とする意見が強く出ています。
企業のM&Aは有効な企業戦略のひとつであり、たとえどのような状況にあろうともM&A(企業の買収・合併)の、それ自体は責めを負うべき存在ではありません。ただ今回の場合、ZOZOTOWN自体が前澤氏のワンマン企業であり、「企業=経営者自身」との印象も強かっただけに、前澤氏を信じて従って、あるいは憧れて付いてきた社員たちの立場を考えると、前澤氏はワンマン経営者として社員のことをどう考えてきたのか、またこの先をどう考えて行動したのか、その点はかなり気になるところであります。
辛辣に申し上げれば、同社の株価が下げ続けている折に、市場よりも高く買ってくれる相手に持ち株を売り抜こうという自己利益を優先させて、社員のことなど頭になかったのではないかと言われても仕方がないのではないかと思うのです。