仮想通貨はブロックチェーン技術を支えており、それを支えているのがマイニングと仮想通貨の「取引」です。
でも、なぜ仮想通貨の取引が必要なの? と思う人も多いのではないでしょうか。
今回は、仮想通貨の取引がブロックチェーン技術を支えるために必要であるということを説明したいと思います。
経済を支える金融商品の取引
まず、仮想通貨の取引をみる前に、従来からある金融商品である株式と為替(外国為替証拠金取引=FX)の取引に関して見ていきましょう。
まずは、資本市場を支える「株式取引」から。
株式は、企業が資金調達のために上場させます。そこで株式が取引されますが、おおよそ年間収益の10倍以上(株価収益率=PER10倍以上)の評価されて取引されるため、企業は多くの資金を調達することが可能です。
そうして調達した資金で、企業は人を雇い、設備投資を行い、新しい商品を産み出したりします。もし株式が上場しないと、この資金が手に入りませんので、雇用が拡大せず、新しい商品も産まれないかもしれません。
今さらですが、株式取引は経済を活性化させ、経営資源に必要なヒト、モノ、カネの調達が容易になるのです。
さて、その株式を売買する投資家には、さまざまな「種類」がいます。大きな資本を持つ機関投資家から、空売りなどを用いて利益を狙うヘッジファンド、少額の資金で売買する個人投資家まで、その投資資金は数万円から数兆円まで幅があります。
また、投資スタイルもさまざまで、数年後の値上がりと配当金を狙う投資信託や、その日のうちに取引を終えるデイトレーダー。また、数秒単位で取引を完了させるスキャルピングトレーダーまで取引期間は多岐にわたります。
デイトレーダーなどの短期トレーダーは1日に何度も取引する傾向があるため、取引高は多く、市場に流動性を共有していることになります。流動性が高いと、買いたい値段で買いたい量を買いやすくなります。
ここで、短期売買のトレーダーがいなくなったらどうなるのかを考えてみましょう。流動性が低下する影響で、市場のボラティリティは上がり値動きが激しくなります。値動きが激しくなると、機関投資家はリスクを取りづらく、投資資金が縮小します。投資資金が縮小してしまうと、市場が盛り上がらなくなります。そうすると、企業は資金調達が困難になり、経済が回らなくなる可能性があるのです。
株式市場が資本市場を支えており、それは多くの取引が成立することによって成り立っているわけです。
貿易を支える為替取引
FXの例も見てみましょう。
為替取引の実需といえば、主に貿易取引があります。しかし、為替取引における貿易の関連は5%程度だといわれており、そのほとんどは投機的取引です。
なかでも、日本は世界一のFX大国です。GMOクリック証券は7年連続FX取引高で世界一を誇っており、月間売買代金が800兆円を超える時もあるほどです。
そんな為替市場において、FX取引がなくなったらどうなるでしょう――。日本の輸出・輸入額を合わせると、ざっと15兆円程度。GMOクリック証券のFX取引と比べると、いかに小さいかがわかります。
そんな為替市場で市場が急変するような金融政策の変更や地政学的リスクが発生すると、売り買いが一方的に偏る可能性があります。そうなった時に為替市場の値動きは、現状とは比べものにならないでしょう。
実際に、FX取引が一般的になる以前の80~90年代の為替市場は、米ドル円が1日に2円程度動く非常に値動きの激しい状況だったようです。市場が安定していないと、貿易会社は不安ですよね。
やはり投機的なFX取引も、為替市場を支えているといってよいでしょう。
◆ マイナーの受け皿となる仮想通貨取引
さて、仮想通貨ですが、まずはその実需について知ってきましょう。
・買い:ICOや※IEOへの参加、マイニングマシンの購入
・売り:マイニングにより仮想通貨を獲得したマイナーや、ICOで資金調達を行ったプロジェクト側の売り
※取引所がプロジェクトの審査や個人投資家への募集を行う資金調達方法
仮想通貨の実需は上に挙げたとおりですが、海外への送金のための購入や、中国人などの資産逃避のための売買(J-CAST会社ウォッチ「ビットコイン価格が急上昇! 『復活』の原因を探ると......」2019年6月13日付) もあります。
株式市場や為替市場にも、決算や雇用統計などのイベントがあると売買が集中しますが、仮想通貨でも人気のICO(新規仮想通貨公開。「トークンセール」とも呼ばれる)や世界的なイベント、マイニングマシンの販売があれば、売買が集中しやすくなります。2019年4月~6月の上昇相場は、まさにこれらの好材料が集中したことにあります。
仮想通貨は確実に世の中を変える
では、仮想通貨の取引高が今よりも乏しかった時はどうだったでしょうか――。2013年3月に発生したキプロス・ショックを見てみましょう。
この時に、キプロスの人の銀行預金の一部に税金がかけられるという事態が発生しました。その時にキプロスの人が目を付けたのが、ビットコイン(BTC)です。2013年1月には1BTC=1200円程度でしたが、ユーロからビットコインへ急激に資金が流入し価格は急騰。4月には1万3000円を超え、短期間で10倍以上になったほどの歴史的急上昇となったのです。
これは投機的取引がほとんどなく、一方的に「買い」に偏った結果だと言えます。
仮想通貨の普及には、セキュリティと価格の安定性が重要だと言われています。そのため、フェイスブックの「リブラ」が登場し、良くも悪くも世界が変わると注目を集めています。
仮想通貨を取引するユーザーは増え続けており、レバレッジ取引も盛んになっていることから、年々価格は安定していくのではないでしょうか。
金融市場の長い歴史を見てみると、日経平均株価は4万円近くから1万円割れまで下落。米ドル円は90年代には1ドル=150円だったものが、80円まで下落しました。
歴史ある金融商品ですら、10年も経つと2倍以上の値動きが発生するのです。仮想通貨の誕生からわずか10年。凄まじい成長ゆえの反動もありますが、確実に世の中を変えているテクノロジーであり金融商品です。
そんな仮想通貨の取引に参加することは、世の中を支える一翼を担っているといえるのかもしれません。(ひろぴー)