「アルタビジョン」の売り上げアップをどうするか!
―― 社長就任時、会社はどのような状況だったのでしょうか。
嶋田正男社長「社名にもなっている『スタジオアルタ』は1980年代以降、フジテレビ系列の長寿番組『笑っていいとも』で有名な収録スタジオでした。私たちが若い頃は、新宿の待ち合わせといえば、『アルタ前』が合言葉。長年、このスタジオの貸し出しに、売り上げのほとんどを頼っており、名実ともに最重要ビジネスだったのです。
しかし、2014年に番組が突然終了することになり、業績は急速に悪化。その後、アルタビルのリニューアルに伴い、スタジオは取り壊されることになりました。主力だったスタジオ事業自体がなくなってしまったのです。
そもそも、『スタジオアルタ』は三越とフジテレビのジョイントベンチャーで始まった事業でしたが、『笑っていいとも』の終了によって、フジテレビの持ち株比率は大幅に減少しました。スタジオアルタに残された主要事業は、アルタビル壁面に設置された街頭ビジョンの『アルタビジョン』と、新たに開業した劇場『オルタナティブシアター』。そして『三越劇場』の運営でした。
しかし、私が社長に就任したとき、どの事業にも黒字化を期待できるような明るい要素はなく、社内に閉塞感が蔓延していたのです」
―― 4期連続の赤字で迎えた2018年度、7500万円の黒字化に成功されたと聞いています。いったい、どのような手を講じたのでしょう。
嶋田正男社長「とにかく、赤字要因を止めることを第一に考えました。まず、オルタナティブシアターでインバウンド向けに自主公演していた『アラタ~ALATA~』の打ち切りを決めました。多額の投資をして、ゼロから制作した演目でしたが、黒字化のメドがまったくつかなかったからです。
『アラタ~ALATA~』のために採用した人材も減っていきました。そして、細々と続けていた番組制作事業からも撤退しました。他にも、コンサルティング会社との契約解消、事務所の賃料や人材派遣会社への支払いの削減、減損処理を実施して、収益構造を見直しました。すると、私が着任してから半年のうちに、赤字解消の道筋が見えてきたのです。
さらに、事業の構造改革を推進しました。オルタナティブシアターは、自主公演から、劇場をリースする貸し小屋に転換。その後、すぐに大手のエンタメレーベルに長期で利用いただけることになったのは、本当に幸運でした。三越劇場では、社員への意識改革を行い、当たり前になっていた赤字公演を削減。チケットシステムも導入しました。ここまではある意味、教科書どおりにできました。
ただ、黒字化には基幹事業の『アルタビジョン』の売り上げアップが欠かせません。そのことはわかっていたのですが、私自身にも知見がない中で、内部のリソースに限界を感じていました。
そこで、外部の助けを借りる方向に舵を切ることにしたのです。それ以前も人材派遣会社は利用していたのですが、もう少し深くかかわってもらおうと、外部のプロ人材の活用を提案する『プロシェアリング』というサービスがある、サーキュレーション社に相談して、外部コンサルタントの助言を受けることにしたのです。じつは、この決断が黒字化に転換する第一歩となりました」(つづく)
(聞き手 戸川明美)