つい先日、自宅近くの中華料理屋で友人と食事をした。そろそろお開きというタイミングで、ふとテーブルのそばの壁に目をやると、そこにはQRコード決済専用のバーコードが。友人が慣れた手つきでスマートフォンをかざすと、次の瞬間には決済が終わっていた。
いまやキャッシュレス決済も百花繚乱。代表的なキャッシュレス決済手段であったクレジットカードや電子マネーに加えて、QRコードやバーコードによる決済、Apple PayやGoogle Pay、デビットカードなど、じつに選択肢が多くなった。
時代はキャッシュレスといわんばかりの様相だが、実際、消費者にはどこまで浸透しているのだろうか。J.D. パワーが2019年8月、日本国内に住む20代~60代の男女400人を対象に実施したアンケート調査「キャッシュレス決済に関する実態・意識調査」の結果から、その実態や今後の展望を見てみたい。
スマホ決済はまだ黎明期
政府はキャッシュレス・ビジョンを掲げ、「未来投資戦略2018」では今後10年間(2027年6月まで)に、キャッシュレス決済比率を倍増して4割程度とすることを目指す、と宣言している。
また直近では、2019年10月1日からの消費税率の10%引き上げのタイミングで、2020年6月まで、対象店舗で登録されたキャッシュレス決済で支払うと、消費者に最大で5%の還元を行うと発表している。
今、世間の耳目を集めているのはQRコードやバーコードを用いたキャッシュレス決済だろう。ただ、この調査ではクレジットカード、電子マネーがまだまだ強い存在感を放っていることが明らかになった。
過去1か月以内に利用されたキャッシュレス決済方法として、クレジットカードが最も多い、74%を占めた。次いで電子マネーの64%だった。一方、QRコード・バーコード決済の利用率は低く、24%。Apple Pay/Google Payの利用経験はわずか5%にとどまった。
ざっくりと言えば、まだ4人に1人程度しかQRコードやバーコードによる決済を利用していない状況のようだ=図表1参照。
図表1「過去1か月以内に利用したことがあるキャッシュレス決済」
キャッシュレス決済経験者の中で、過去1か月以内にスマートフォン決済(QRコード・バーコード決済、仮想通貨、Apple Pay/Google Pay)のいずれかを利用した人のうち、約7割が「スマホ決済対応の有無に関わらず、使いたい店舗や施設を選ぶ」と答えている。残りの約3割は「できるだけスマホ決済機能に対応している店舗や施設の中から選ぶ」と回答した。
スマホ決済は支払方法としては、まだまだ黎明期にある。また、これにより決済対応店舗のさらなる拡充がスマホ決済の普及には必要な要素であることが示唆される。
スマホ決済機能の種類やブランド・事業者をなるべくひとつにまとめたいか、使い分けたいか、という2択の質問に対しては、「なるべく一本化したい」派が58%と「都度選択」派を上回った=図表2参照。
図表2「スマートフォン決済サービスの選定基準」
どうやら、消費者はスマホ決済の対応の有無に関係なく、自分の好みで店舗を選ぶ傾向があり、スマホ決済を使う場合は、利用するスマホの決済サービスを一本化したいと考えているらしい。