「完結出生児数」は30年以上「2」
日本は1995年以降、その数字が「2」であれば、人口水準が維持されるという合計特殊出生率が1.5未満となり、超少子化社会に突入した。出生についての統計はほかに「完結出生児数」というのがあり、これは「夫婦の持つ子どもの数=初婚同士のカップルが最終的に持つ子どもの数」のこと。こちらは、30年以上ものあいだ「約2人」となっており、政府が合計特殊出生率で目標にしている「1.8」を超す状態が続いているのだ。
合計特殊出生率の「計算式の分母は、15~49歳のすべての女性。つまり既婚女性だけではなく未婚女性も含まれる」のであり「日本では婚外子がほとんどいない状況なので、未婚女性の出生率はほぼゼロ」だから、分母の未婚女性の割合が多くなるほど下がることになる。だから、日本の出生率の低下の大きな原因は、夫婦の子ども数が減ったことというより、未婚者が増えたことなのだ。
未婚者に結婚願望があること、既婚夫婦は平均して2人の子どもをもうけていることはわかったが、未婚者は結婚後に子どもを欲しいと考えているのかどうか。国立社会保障・人口問題研究所の「出生動向基本調査」によると、この20年間ほど、未婚男女とも平均して2人の子どもを希望する状況が続いており、希望子ども数を「ゼロ」と回答したのは、男性6%、女性5%だった。
著者の天野馨南子さんは、ニッセイ基礎研究所生活研究部准主任研究員。東京大学経済学部卒業後、1995年に日本生命に入社、99年から同社シンクタンクに出向し、少子化対策・少子化に関する社会の諸問題の研究に取り組んでいる。
内閣府少子化対策関連有識者委員なども務めているが、自ら取り組んだ統計上の研究から、少子化対策として、夫婦の間に生まれる子どもの数を増やそうとする従来の「子育て支援策」より、急激に増えている「未婚化」の対策に本格的に取り組むべきと述べている。
「データで読み解く『生涯独身』社会」
天野馨南子著
宝島社
税別800円