「育休中に2人目を妊娠したいけど、連続して育休を取るにはどうしたらいい?」。現在産休中の女性の投稿が、炎上ぎみの話題になっている。
「厚かましい。職場の大迷惑」
「子どもを作るなら退職してからにして」
という批判の意見と、
「権利として認められているから、堂々と子どもを産みなさい」
という応援の声だ。専門家に聞いた。
「10年以上も産休・育休の幽霊社員がいる」
話題になっているのは女性向けサイト「発言小町」(2019年7月27日付)に載った「育休中に2人目を妊娠したい」という投稿だ。
「もうすぐ出産日を迎えます。初めての出産です。出産するにあたり、育休代替の方(育休復帰後、引き継ぎ終了ごろまでの契約で募集)をパート採用してもらえ、みっちりと引き継ぎをして産前休暇に入りました」
ただ、36歳という年齢と夫の年齢(38歳)を考えると、どうしても早く年子で次の子を産みたいと思うようになったという。
「育休中に次の子を妊娠した場合、復帰しないまま次に妊娠した子どもの産休に入れるのでしょうか? 年子を産んだ方、教えてください」
この投稿に、「非常識だ」「職場の大迷惑」という批判の意見が4割近くあった。こんな声だ。
「すぐ退職して! あなたの育休中、他の人に仕事のしわ寄せがきています。育休が明けて埋め合わせしてもらえると思うから頑張っているのです。育休中妊娠して、さらに産休とって育休とって......いい加減にして! あなたが退職すれば新しい人を雇えます。権利の上にあぐらをかかないでほしいです」
「自分が同僚だったら、うわー、厚かましい。子供優先するなら辞めてから作って、かな。ゴメン、キツくて。でも、正直連続で育休とって復帰しても、どれだけ仕事ができるのかな。内容が変わっているだろうしね」
「うちの会社にも『幽霊社員』がいました。採用半年後にできちゃった婚。1年過ぎから産休入り。そこから1人目の育休を3年。あと半年で復帰というところで2人目妊娠。そのまま2人目の産休、3年の育休。今度こそ復帰って思っていたら、また3人目妊娠。育休明けから産休に入るまで間があると思っていたら、体調が悪いとかで休業し、そのまま産休。お約束のように3年の育休......。途中で会社も諦めたのか、いないものとして人員配置がなされました。通算10年以上も仕事しないまま復帰したら、のほほん時短。10年以上もワードもエクセルもまったく触ってこなかったので、使いものになりません。そのうち退社しました」
「授かった者勝ちです。権利だから堂々と産んで」
一方、「権利だから認められる」「子育て頑張って!」というエールも同じく4割近くあった。
「夫婦共に赤ちゃんが欲しいのなら、周りの事など気にせず二人目を望んでよいと思いますよ。一定数『迷惑』と思う人間もいるのでしょうが、今の時代、子どもを産まない女性が増えています。日本はどうなるのでしょう。社会は子どもを産んでくれる女性に感謝しないといけないと思います。子供を産む女性が安心して妊娠出産を終え、会社に戻って来られる状況を作るのが当然なのにね」
「周りに負担がいくというのもわからなくはないけど、それは会社の采配ミスであり、産育休を取る本人に対して言うことではありません。義務を果たしてない、ってよく言う人がいますが、義務って何? 周囲の社員が不当に負担を強いられないようにするのは会社が考えること。授かった者勝ちです。私は子なし会社員ですが、応援します」
そして、制度の話や職場への配慮についてこんなアドバイスが――。
「職場にもよりますが、3年職場規定の育休が認められていれば条件に当てはまります。だから、焦らずとも大丈夫ですよ! 周りの人への配慮も大事だとは思いますが、ご自身の健康・精神状態、優先してください。詳細な条件はハローワークや健康保険組合に問い合わせれば、丁寧に教えてもらえますよ」
「制度上は可能でも、育休を連続取得した際に、会社や同僚から悪印象を持たれないかまではわかりません。信頼できる上司に相談されるほうがいいと思います。でも相談したことで育休切りの対象になることがまったくないとは言えず、この判断は難しいです。私の場合は、会社がかなりブラックなので、育休後復帰させてもらえず、合法的に解雇にもっていかれることが確実なので、現在、育休連続取得中です」
「応援するけど、年子は地獄絵図だよ」
また、連続して育休をとった方が、むしろ会社のためにもなるという意見もあった。
「賛否はあると思いますが、複数子供が欲しいのであれば、復帰して慣れた頃に再度妊婦になり、また引き継ぎをするよりも、キャリア的にも周りの負担も少ないと考えます。会社側も復帰、産休育休入り、復帰...のたびに補充人員を雇ったり、切ったりしなくてすみます」
もっとも、「応援はするけど、年子はキツイよ~」といいうアドバイスが非常に多かった。
「理屈の上では可能だが、現実的には結構ハード。まず、個人差はあるけど母乳育児をするなら生理(排卵)が復活するのは、第一子が1歳を過ぎてからになることが多いです。だいいち慣れない育児に疲れ果てて、子作りする気力体力どころではない人が大半だと思いますよ」
「2歳の長男と、1歳の次男を育てている34歳です。年子、キッツイ~ですよ。体力は大丈夫ですか? 双子は大変さが2倍じゃなくて2乗といいますが、年子も同じ。パパは育児できる状態ですか? お手伝い程度じゃヌルい。パパのガッツリ協力が必要不可欠。パパがいない場合は、もう地獄絵図ですよ」
J-CASTニュース会社ウォッチ編集部では、女性の働き方に詳しい、主婦に特化した就労支援サービスを展開するビースタイルの調査機関「しゅふJOB総研」の川上敬太郎所長に、この「育休中の二人目妊娠ってOK?」論争の意見を求めた。
「妊娠したことで責任を問われる風潮はおかしい」
――今回の投稿に対する反応を読み、率直にどんな感想を持ちましたか?
川上敬太郎さん「法制度上は、育休期間中に第2子を授かった場合、条件さえ合えば、間を空けずに続けて育休取得することが可能です。投稿者さんからの質問に対しては、職場に復帰しないまま次に妊娠したお子さんの産休・育休に入ることは可能、という回答になるかと思います」
「2017年10月から育児休業が2年まで延長してとれることになりました。そのことに関連して、働く主婦層に『育休をとるとしたら2年まで延長したいと思うか』と聞くと、育休を2年まで延長したいと考える人が55.6%いました。一方で、『延長したいと思わない』と回答した人は13.5%にとどまっています。少なくとも2年という期間では、育休取得に肯定的な考えの人が多いようです」
――しかし、制度上は認められても、連続して育休をとられることは「職場の大迷惑」と批判する人が結構多いですね。私の知り合いの企業人事担当者も、この回答の中に出てくる「幽霊社員」のようなケースがあり、次々と産休・育休の権利を行使したあげく、辞められてしまい、「せっかく育成しても空しい思いがする」とこぼしています。
川上さん「長期間仕事に穴を開ける、という意味で、迷惑と捉える人が出てしまうのでしょう。仮に育休取得中の社員の仕事を他の社員に上乗せし、それが評価に反映されなかったりすれば、迷惑だと感じてしまう気持ちはわかります。また、せっかく育成した人材が、長期間の育休取得の後に退職してしまったとしたら、空しい気持ちにもなるのも無理はないでしょう」
「ただ、それらの感情は仕事に対するものであるはずです。問題なのは、それらの状況になった責任が育休取得者にあると考える人が、一定数存在するということにあります。しかし、妊娠は人々が生活する中で生じる自然な営みの一部です。本来は、妊娠したことで何らかの責任を問われるようなことではないはずだと考えます」
「会社も育休社員もウィンウィンとなる関係に」
――なるほど。「妊娠したこと自体が悪い」と責めるような風潮は確かにおかしいですね。
川上さん「妊娠は望んでも叶わないこともあります。子どもを授かること自体が喜ばしいことだからこそ、応援する声も多いのだろうと思います。ただ、投稿者さんが育休取得することによって、その分仕事に穴が開くことは間違いありません。当然ながら、育休中も会社の一員です。仕事が上手く回るよう、同僚に余計な負荷がかからないよう、最大限できることをし、配慮することが社員として求められる振る舞いだと考えます」
「決して自分を犠牲にしてまで無理をする必要はありませんが、自分は育休に入るのだから後のことは関知しません、という態度では無責任に思われてしまいかねません。スムーズに復帰できる関係性を築く意味でも、会社や同僚への配慮は怠らないようにすべきだと思います」
――エールの中には「産休・育休を連続取得した方が、むしろ職場として助かる」という意見がありますが、どう思いますか。
川上さん「予め職場を離脱する期間がわかっていたほうが対応しやすい、という意味だと思いますが、実際に対応しやすいかどうかは会社の体制や職務などによって変わってくるものと思います。それに、第2子を妊娠できるかどうかもまだわかりませんし」
――それはそうですね(笑)。投稿者のように連続して育休をとりたいケースについて、会社側や本人はどういう点に配慮して対応すべきでしょうか。
川上さん「少なくとも、育休取得を迷惑だと考える職場だと、社員は復帰したくなくなると思います。育休取得者を迷惑な存在と考える社員の感情も、社内体制や評価制度などを整えることで改善できる余地は多分にあると考えます。
育休が心置きなく取得できる職場環境や風土をつくることができれば、会社も社員もウィンウィンとなるはずです。会社の都合だけを優先して社員に犠牲を強いるようなマネジメントは、完全に時代錯誤です」
「子どもを授かることはおめでたいことですし、育休取得することは当然だと思います。しかしながら、育休が長期間になればなるほど、職場での仕事カンは鈍ってしまいます。復帰後、どのように会社に貢献するのかをイメージした上で、育休期間の過ごし方を考えることをお勧めします。家事一つとっても、日々の取り組み方次第で、仕事力を高めることができます。育休期間をブランク期間にしてしまうか、家オペ(家事や育児など、家仕事のオペレーション)期間と捉えて積極的に過ごすかで、職場復帰時の気持ちも仕事カンも全く違ってくるはずです」
「その一方で、職場復帰するつもりがなく、権利行使のためだけの育休取得は会社にとっては喜ばしくありません。同僚からの反感を買い、育休取得する他の社員のイメージを悪くしてしまいます。そもそも、育児・介護休業法の趣旨は、職場復帰が前提です。そのことを決して履き違えないようにしていただきたいと思います」
(福田和郎)