恩師ノ・ムヒョン元大統領の遺志を継ぐ文大統領
こうしたなか、「検察改革」は金大中(キム・デジュン)、盧武鉉(ノ・ムヒョン)の左派政権の悲願だった。特に、盧武鉉政権の時に、現在の改革案と同じ高位公職者犯罪捜査処と、警察に捜査権の一部を分割する案が提案された。
しかし、検察組織の強い抵抗にあって潰えたうえ、盧武鉉氏は崖からの飛び降り自殺に追い込まれた。その盧武鉉政権時、同じ人権派弁護士の先輩・後輩の関係から側近となり、検察改革案を作ったのが、現在の文在寅大統領なのだ。
ハンギョレ(9月10日付)「文大統領、チョ・グク・リスクにもかかわらず検察改革への意志示す」は、文在寅大統領の「正面突破」の背景を、こう説明している。
「最も大きな理由は、現政府の最大の課題である検察改革を完遂するためだ。検察の前例のない全面捜査のなか、チョ長官の妻が起訴される状況にまで発展したが、チョ長官本人の違法・犯罪の容疑はないという名分を掲げ、正面突破を選んだ」
人権派弁護士である文大統領は「疑わしきは罰せず」の原則を打ち出したのだ。「疑惑」だけで任命を取りやめては、検察に屈服することになる。
「文大統領は『権力機関の改革が最も重要な公約だった。私と共に権力機関の改革に向けて邁進し、成果を見せてくれたチョ長官に、その仕上げを任せたい。その意志が座礁してはならない』と強調した。大統領府の高官は『文大統領は、検察の介入が異常だと見ている。検察の捜査で、チョ長官の任命が実現されなければ、後任が誰になっても検察改革は困難だと判断したようだ』と述べた。盧武鉉政府時代に機会を失い、検察改革に失敗した苦い経験を踏まえた選択と見られる」
文在寅大統領は、自分とチョ氏との関係を、自殺して検察改革を果たせなかった恩師・盧武鉉氏と自分との関係になぞらえたというのだ。
(福田和郎)