少子高齢化、地方の衰退、日本銀行の低金利政策による利ザヤの縮小など、厳しい経営環境にさらされ、業績の悪化が著しい地方銀行。その地銀に対して、最後通牒とも受け取れる厳しい監督姿勢を金融庁が打ち出した。
8月28日、金融庁は年間の行政方針を示す「金融行政方針」を発表。この中で、異例なほどの紙面を使って地域金融機関についてのさまざまな方針を打ち出した。特に注目を集めたのは、「預金保険料の可変料率」に言及したことだ。
預金保険料の多くはメガバンクが納めている
預金保険とは、簡単に言えば銀行が預かった預金に掛ける保険だ。銀行の経営破たんなどで預金者を保護するために、銀行では預金に対して、預金保険機構に預金保険料を積み立てている。
その保険料率は、メガバンクも、地銀も、信用金庫も、信用組合も同一となっている。しかし、預金保険法では、各金融機関の健全性に応じて異なる預金保険料率(可変料率) を適用することも許容されている。
そこで、金融庁は「地域金融機関の将来にわたる健全性を確保するための規律付け・インセンティブ付与としての機能も視野に入れ、現行制度を前提にしつつ、預金保険料率のあり方の方向性について、 関係者による検討を進める」ことを打ち出したのだ。
預金保険料の可変料率は、海外では広く取り入れられているが、日本ではすべての金融機関に対して同一料率が続けられてきた。じつは、可変料率の導入が取り沙汰されたことはこれまでにもあった。
バブル経済崩壊後、金融機関では経営破たんが相次ぎ、一時は預金保険の積立金が枯渇する事態にまで至った。しかし、その後は金融機関の経営破たんは減少し、積立金は順調に回復している。そうしたなか、たとえばメガバンクのように巨額の預金を抱える銀行は、納付する預金保険料も巨額になるが、その半面、預金保険制度を使うことはない。
つまり、メガバンクなどは、自らが使うことのない保険に巨額の保険料を納付する一方で、保険を使うのは中小金融機関という構図ができ上がっているのだ。
このため、「預金保険を使う可能性が高い金融機関が、高い保険料率で納付すべき」(メガバンク関係者)との声が高まり、保険料の可変料率はたびたび検討の俎上に乗った。